第85話
真の意味で男女平等主義な俺としては、面倒ごとはきちんとお断りしたいのだが流石に人様の船を破壊しておいて話を聞かないのは如何な物かと思い諦めた。
「実は、私の名前はエメラス・ド・ルグニカと言います」
エメラスの名前からしたら貴族なのか?それにしても家名がルグニカね……。どこかで聞いた名前だったがどこだったか?思い出せん。
「私の祖国、海洋国家ルグニカでは10年に一回王位簒奪レースと言う物が行われているのです。そのレースにお力を貸して頂けませんか?」
エメラスの身長は俺よりも高いが今は、膝をついてることもありベッドで横になっている俺よりも目線は低い。そのために見上げるような形になっている、その瞳はとても真摯な色を称えており誰もがその瞳を見たら力を貸したくなるだろう。
「いえ、お断りします」
まぁ人生60年近く生きてる俺としては、そんな物には一切心動かされないし第一、王位がかかるような簒奪ってつくような物騒なレースに参加したら面倒事に巻き込まれるのは目に見えてる。そんな物に手助けするなどどこぞの物好きな物語の主人公くらいだろう。
だが俺は違う、訓練されたボッチなのだ。主人公ががんばって、助けた女性にキャー素敵、抱いて!とか言うような展開は一切無いと断言している。
そんな俺が船の一部を破壊したからと手助け?
無理無理それこそありえないだろう。
「そ……そんな……」
俺の前で俯いてしまった彼女はとても庇護欲をそそられるだろう。俺にはあまり関係ないが大半の男はそれでイチコロのはず。
とりあえず今は、船酔いという事もあり話してるだけでもつらい。
お帰り願おうとしよう。
あまり他国の問題に異世界人の俺が首を突っ込むのも良くは無いからな。
「私は、こう見えても人に平等に接しないといけないのです。ですから誰か一人に助力するのはあってはならない事です。私が顕現した理由は話せませんが。その辺も含めてご理解頂けますか?」
そうこの世界の神様と言うのはだれか一人に肩入れはしないと貴族時代にアプリコット先生から習った事がある。
詳しくすると違うが大きく分けるなら平等に接しましょうだ、だから俺のこの言い分は彼女のお願いを断る大義名分になる。
そこで彼女はハッ!とした表情をした後に俺を見上げてきた。
「ま、まさか……クサナギ様は、北の永久凍土の中に今もなお存在しているという大邪神ヤンデールを倒しに向かわれるのですか?」
え?何いきなり急展開すぎてついていけないんだけど……?
誰だよ、大邪神ヤンデール。そんな奴しらねーし、アプリコット先生にも教えてもらった事がない。
しかも永久凍土とかそんな寒い所になんて行きたくもない。
「ち……ちが……いません」
すごい瞳をキラキラさせて俺を見つめてる彼女を見たら違いますとは言えなかった。
それでも彼女は俺の手を握り締めて懇願してきた。
明日、ぜひ私の話をもう一度聞いて頂けませんか?と……。
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