第56話
突然の弁明に僕は呆れかえってしまった。
王宮に貼られてる結界は強固で上位魔族ですら用意に入ってこれないと魔法の先生に習ったことがあるからだ。
それをこんな小さな抗う術すら持たない子犬がそんな大それた存在に見えたのだろうか?
「本当に……そう思ってるのか?」
僕自身、思っていたよりもずっとずっと低い声が出ていた。
二人は僕の機嫌を損ねた事に気づいたのか何度も僕に謝罪してきた。
「どうか……どうか……国王陛下様だけには……」
「お願いします。この事はご内密にしてください、せっかくの殿下の遊び相手と言う大事なお役目が」
二人の話を聞いて僕は……僕は……。
「分かった、もう行け!」
僕の許しを得られたと思ったのか二人は、その場から逃げ出すように立ち去っていった。
「どういたしましょうか?クラウス様」
僕の付き人は、先ほどまで暴力を振るわれ虐待されていた白い小さな子犬をその腕に抱えていた。
それを見て僕はやるせなくなった。
僕の前だけでは良い人のふりをして影では暴力を振るうそんな事に僕は気づけない程愚かだったのだなと初めて気が付き
僕自身のふがいなさに怒りを覚えた。
「そ…う…だな……」
友達と思っていたのは僕だけで彼らの目線はずっと僕の後ろにいる父上に向けられていた。
それがさっきの謝罪で良く分かった。
今、僕が付き人に答えた言葉は震えてはいなかっただろうか?
「王宮医に見てもらってくれ」
「わかりました」
僕の言葉に付き人の一人が頷くと子犬を抱えたままその場をあとにしていった。
今日は、騎士の訓練を見る気分では無くなったので僕は部屋に戻ろうとしたが
そこで父上の言葉を思い出した。
「最後まで面倒を見なさいか……よし!エルス、王宮医の元に向かうぞ!」
僕は王宮医の元へ歩を進めた。
しばらく歩くと王宮医の部屋が見えてきたので走ってはいけないと思ったけど走って扉に駆け寄った。
そして扉を少し開けたところで、
「どうですか?」
「これはもう魔法でも手がつけられんな、内臓が破裂しておる。もって今日の夕方までじゃろうて」
聞こえてきた会話に僕は凍り付いた。
そして、魔法の先生がいつも教えてくれていた魔法は万能でありどんな願いも叶えてくれると言う話と違うのか?と
「そうですか、仕方ないですね」
何故、そんなに簡単に諦められる?
命は一つなんだ!
それをなんでそんなに簡単に!
「クラウス様には元気になったので王宮の外に放しましたと伝えておきます」
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