第24話
この二つを成功させる必要があると言う事だ。
「(さて、どうするか……)」
先にどちらから攻めるか……。
「まずは、アリス様にお伺いします」
「なんですの?」
「先ほど、魔法石売買の独占で不利益を得ている貴族がいるとおっしゃられましたが?」
俺の発言にアリスが意外そうな目で俺を見てきた。
「え…ええ。貴女にも分かりやすく言いますと一つの物価を独占して売りさばく事は流通を止める事になり多くの者に不利益を与える事になります。そのような事で財を築く事は良しとはしないでしょう?」
「独占禁止法のようなものですか?それは王国の法に書かれているのですか?私は、そのような事が書かれてる王国法を見た事がないのですがどうなのでしょうか?」
ざわざわとホールがざわめいていく。それを聞きながらも俺も内心溜息をつきながら考える。
俺だってこんな一方的な断罪じゃなければ素直に婚約破棄してアリスにクラウス殿下を押し付けていた。だが、話はそう簡単じゃない。
ここで手を間違えばシュトロハイム家だけじゃなく流通経済を否定する事にもなりかねない。それは、王国の経済衰退にも直結する。
「そ、それは……」
アリスから答えは返ってこない。そりゃそうだろう。こんな中世時代に独占禁止法などない。
そして彼女が独占がいけないと叫んだ所で本当の独占など権力で圧力をかけた物でない限り存在しない。
良質の魔法石をシュトロハイム家が市場に安定供給してるからこそ、低品質の魔法石を扱っていた貴族が窮地に陥ってるだけに過ぎない。なら、俺がやることは王国法を用いて日本経済を主観的に見て相手を論破することだ。
「まず、先ほどアリス様は仰られました。良質な魔法石をシュトロハイム家が独占してると、なら他の魔法石を販売していた貴族の方はどのような魔法石を販売していたのでしょうか?
もし、我がシュトロハイム家よりも劣る魔法石を販売していてそれで売れなくなったと言うならそれは市場原理に基づくようにエンドユーザーのニーズに企業側が対応出来ていなかっただけではないですか?顧客はより良い物を購入するのは自明の理。
なのに、努力を怠り製品の品質を上げないのは企業側の怠慢ではないでしょうか?それを相手に擦り付けて自尊心を満たす行為は恥ずべき行為ではないのですか?」
そこまで行って俺は気が付いた。周囲の誰もが氷ついたように止まっていた事を、アリスですら口をパクパクしたまま何も言えない事に。
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