第四十二話 神隠し


 大正末期のある日の田舎街、一人で遊んでいた小さな子供が開いていた土蔵の中に入ってしまった。


 それをたまたま見ていた父親は、中の物が崩れては危険と心配し蔵の中の我が子を追う。



 しかし、幾ら捜せど我が子は見付からない。流石に焦った父親は、警察・親類などに片っ端から協力を要請。蔵の中の道具全てを出して床まで調べたが、やはり子供は見付からなかった……。


 周囲一帯から街全体まで捜索範囲を広げたが、結局痕跡すら見付からない。


 失望の内に三年……一向に手掛かりが掴めなかった両親は、それでも我が子が戻ると信じ続けた。


 ある日、蔵の側を通ると中から音がする。慌てて鍵を外し中を覗くと、そこには行方知れずだった我が子の姿が……。

 驚いたことに服は行方不明になった時のまま。外見も幼い頃の姿……成長期の子供では考えられない事態だった。


 今まで何処に居たのか聞いてみても何処にも行っていないと子供は答える。蔵の中に入ったら扉が閉まり、直ぐに開いたのだと子供は説明した。



 それ以来その地方では、十四歳になるまで子供を蔵に近付かせない風習が出来たそうだ……。


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