ミルセフォルフィナ様と騎士レイデン

作者 永都佐和

70

25人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

 とても緻密。実際の歴史書かなにかのようなリアルさがあります。とても自分では書けない。
 物語らしくないほどに硬質。いや、この作品をリアルだというのならこれは間違いなく物語であったと、言えますね。
 流れる血の多いこと多いこと。ところどころ安定し欠けた瞬間はあれど、ただひたすらに堕ちていく。ビターというよりダークに近い印象があります。
 あまり軽々しく名前を出すものではないのですが、シェイクスピアみを感じました。
 ミルセの描写のところどころに、優秀ではないという点を強調されているのが、なんともいえないほろ苦さがあります。
 レイデンもそうなのですが、互いに変わってしまったということが伝わってきて、悲哀を覚えてなりません。
 それでも終焉だけは穏やかで。序盤の描写・伏線ともいえるのでしょうか、活きていました。

 それにしても登場人物紹介とのギャップがすごいですね

★★★ Excellent!!!

◇読者を逃さない冒頭
第1話から少年騎士レイデンと女王ミルセフォルフィナが華やかな日々を送る「過去」、宰相となったレイデンであるエウリュイア侯爵がミルセフォルフィナのいる(であろう)首都に攻撃を命じる「現在」。

ギャップある二つのストーリーが、かつてレイデンの書いた手紙を転換点に進行する、読み手を逃さない作りになっています。

一応補足しておくと、何も「どうしてこうなった」と云わざるを得ない後の展開を冒頭からチラ見せしておけば読者を惹きつけられるとか、そういうお話ではなく。たとえば「神の視点」から語られる「斯様な未来の訪れをこのとき誰一人として知る由もなかった」みたいな一節は、余程腕に覚えのある書き手でない限り、概して大事故を起こしがちです。

本作の場合は、「レイデンが父に宛てた手紙」という転換点がとても巧く、過去と現在のギャップで読者をそわそわさせる一方、「この手紙を転換点にしばらくは二つの物語が進行してゆくのだろうなぁ」という安心感を与えてくれます。この場面転換のわかりやすさも、読者を逃さないポイントの一つではないかなと。

◇命の平等
ある出来事を境に、第31話からミルセフォルフィナは暴君と化してしまうのですが、ここでメタ的な読みを明かすと「ああ、もう彼女を安易なハッピーエンドに落とし込む気はないのだな」という作者の強いこだわりというか、覚悟めいたものを感じました。

さて、この"ある出来事"──ミルセフォルフィナにとって大事なある人物の死が関わっているのですが。この人物の死が中々に印象的でして。と云いますのも、まともな遺言の一つも遺せていないのです。創作において、それ自体は特段珍しいケースでもないのですが、この"立ち位置"で遺すことを許されないというのは──「残酷」「容赦がない」「リアリティがある」。色々と解釈する言葉はあるのでしょうが。

個人的には「平等」… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

美しく聡明な姫ミルセフォルフィナと彼女に仕える騎士レイデンの恋物語……というのはあくまでこの物語の一側面にすぎない。
作中で展開されるのは権謀術数うずまく政治劇であり、グラウデン王国の一時代をさまざまな角度から切り取った骨太な年代記。そして第一話で暗示されているように、少年騎士レイデンが堕ちていくピカレスクロマンである。
作者の確かな歴史知識と、息遣いさえ感じられるような繊細な筆致が物語に説得力をあたえ、民族や宗教をめぐる対立と争いを架空世界とは思えないほどのなまなましさで描き出していく。

ミルセフォルフィナの母である奔放な王太后や、有能だが差別意識が強い兄サリュスキストといった個性豊かな登場人物たちが時に物語に華を添え、時に血を流しながら歴史を紡いでいく。
とりわけミルセフォルフィナの養子イオナシルヴィスの去就をめぐる一連のエピソードは、涙なしには読みすすめることが出来なかった。

物語の終わり、二人が辿り着く結末をどうか見届けてほしい。
ハッピーエンドやバッドエンドといった言葉で形容することが難しい、しかし充実した読後感を得られるはずだ。

★★★ Excellent!!!

 第一話から不穏。作品の行く末は悲劇なのだと伝えている。そして二話以降も「どうしてそうなっちゃうんだよ」と泣きたくなるような展開。一話読み進めるごとに読者の悲劇耐性を削ってくる。読者はミルセ様に幸せになって欲しいのに、どんどん逆の方向へストーリーは展開していく。

 そして読み終えた時には、読書体力が欠乏して疲労しているのか、ミルセ様を幸せにする方法はなかったのか悩みすぎて疲労してるのか判らなくなる。

 作者さんは歴史に詳しいから、時代の流れや状況の不運さが人々を巻き込んで悲劇を生じさせることをよくご存じのようだ。だから、「ここでこうしたら?」とか「今なら間に合う」とかの期待など吹っ飛ばして、容赦なく悲劇的結末へと読者を突き落としていく。

 この作品は恋愛にカテゴライズされているけれど、個人的には、歴史上ではありふれた悲しい事件の一つを創作しているとしか感じられなかった。

 もちろん恋愛モノとして読むことも可能だけど、人ってこんなに悲しい生き物なんだよと、選択肢はたくさんあったのに転機をとらえられなければ一つしか道はないように見えるんだよと突きつけ続ける作品のように感じた。

 多分、この作品は読者の観点がどこに置かれるかで性格を変える作品なんだろう。

 総文字数十四万字と厚めの文庫本一冊程度の分量の作品です。
 読み直すごとにきっと新たな見方が可能な作品で、分量から言えば、何度も読み返すことができる作品です。

 是非、読み切って、あなたにとっての悲劇を心に刻んでいただきたい。

 但し! 悲劇への耐性の無い方は十分注意してください。
 悲劇耐性が脆弱だと、私のように、悔しいやら悲しいやらで泣き続けることになりますよ?
 

★★★ Excellent!!!

歴史で見れば「愚王」とされるのであろう聡明で美しい女王陛下と、彼女に愛も憎しみも捧げた美形臣下の、波乱万丈の生涯を綴った物語です。
春夏秋冬、明暗鮮やかな光景の描写が、登場人物たちの心理描写と合わせて際立ちます。気づけばキャラクターたちの背景や表情まで想像しながら読んでいました。

主従の想いが噛み合わず、周囲の思惑にも振り回されて、すれ違っていく……そのドキドキハラハラはもちろん、脇を固めるキャラたちもそれぞれ人間味にあふれていて作品の魅力を増しています。どんな人にも多面性があるのだと、改めて考えさせられる奥深さがたまりません。
個人的には、何かと不器用な陛下の兄君と、はちゃめちゃながらも本質を鋭く突く王太后さまがお気に入り♡読めばきっと「ああ、わかるわ~」と共感してしまうキャラが見つかると思います。

ラストはあまりに美しく、静かに林檎の花びらが舞うようで……胸が熱くなりました。この深い湖のような感動を、ぜひぜひ多くの方に味わっていただきたいです。
繊細な挿絵のついた本で読みたいなぁ……。

★★★ Excellent!!!

天真爛漫な少年騎士・レイデンと、美しき聡明な女王・ミルセフォルフィナ。
二人は仲睦まじい少年と少女、のはずだった。
でも国が、それぞれの立場が、これ以上ないほどの過酷な運命を運び、幼かった二人を引き裂いていきます。

宗教や民族・家系によって国が分断され、美しい王宮が血で塗られてゆく。
二人に罪はなくとも、それぞれの抱える背景が、周囲が二人をどんどん追い詰め、違う人間へと変えていってしまうのです。

そんな中でも、かすかに残された、きっとこれが真実の愛。

激動の歴史の中に咲いた花。
胸に迫る悲劇に涙しながらも、彼らの真の人間性を追いかけずにはいられない。

レイデンの無垢の愛、ミルセフォルフィナの気高き覚悟。
ハンカチの用意はいいですか?
彼らの美しい愛を、ぜひ、その目でお確かめください。

★★★ Excellent!!!

ミルセフォルフィナ女王と暮らした騎士見習いの少年レイデンくん、とっても可愛いです。月日が経ち大人になったレイデンさん、とても格好良く成長しました。
事情がありレイデンは女王の元を去るのですが、女王への愛は変わらず。
ちなみに中々ミルセフォルフィナ様はレイデンの恋心に気付きません。そんなミルセ様も可愛らしいです。

二人がどうなっていくのか続きがとても楽しみです!
ミルセフォルフィナ女王を支える女官マイアも素敵です。