第0054話 魔物使い
『
『はい! ダーリン! お待ちしていました!』
『シン!
ゴブリンに
こうしている間にもゴブリンどもが、わらわらと集まってくる!
階段の上からも、下からも!
そして、つい今し方まで女性たちを
クソゴブリンどもは
ユリコと
ゴブリンどもは今にも飛びかかろうと
彼女たちの
「シン! 早く助けて! も、もう
「大丈夫です。 ダーリンを信じましょう」
その時! 女性が
「翠玉、ユリコ。良くやったな。
お前さんたちが
翠玉に、ユリコ、そして、ゴブリンどもの
被害女性たちは、いつの間にか、シンがいつも女性たちに着せるワンピース等々を身に付けている。 どうやら体内外の浄化と通常の修復神術も施されているようだ。
シンはこの場所に転移してきてからすぐ、この場にいるすべての者たちを
それと同時に、ゴブリンどもが建造物の外へ出て来られないように、シールド発生装置を建造物の地下に転送して建造物全体をシールドで
ものすごくたくさんの鳴き声が……ぎゃぁ! ぎゃぁっ! という
「シン! なにしてたのよ!? 遅いじゃないっ! もう少しで……うう……」
ユリコが
一方、翠玉の方は
シェリーとラフはシンに抱きつくユリコを見て一瞬ムッとした表情を浮かべた。
だが、すぐに『この場合はしょうがないか……』とでもいうように、お互いの顔を見合わせながら肩をすくめて
◇◇◇◇◇◇◇
泣きながら
彼女に
ゴブリンたちは
建造物の中を全員で探し回っているのだろう。 建造物の外に出ようとするヤツは一匹もいない。
「
「ご心配、ありがとうございます。 身体の方は大丈夫です。
ですが……ティアラを
「おいおい。それはお前さんの
だから
「はっ! ありがたき幸せに
俺は
「翠玉。お前さんが無事で良かった……。 怖かっただろう。ごめんな、遅くなってしまって……」
「だ、ダーリン……」
ずっと気を張っていたのだろう……
俺の言葉を聞いて、
同時に翠玉の身体はガタガタと震えだしたのだ。
俺は彼女を
そして、
シェリーとラフは、俺たちが気になるのだろう……。
被害女性たちの健康状態を調べているのだが、こちらをチラチラと見ている。
彼女たちは二人とも、翠玉が涙を流すのを見てもらい泣きする……
◇◇◇◇◇◇◆
「さぁ~てと、ゴブリンどもをどう料理してやろうかなぁ……」
「え? シン! ゴブリンって食べられるの!?」
「いやいや、ユリコさん。ちゃんと意味が分かってて俺をからかっているだろう?
なんなら、
「じょ、冗談よ。 じょ・う・だ・ん! うふふ」
被害女性たちの
だから、サッサと片付けることにしよう!
「ハニーたち! フェイザー銃の用意をしてくれ!
にっくきゴブリンどもを、
出力レベルは……そうだなぁ、7でやるか!」
"はいっ!"
「準備はいいか!?」
"はいっ!"
「発射っ!」
シェリー、ラフ、
建造物は一瞬、
おおよそ800匹のゴブリンどもがここで消滅した。
被害女性たちも連れて、みんなが待っているベースキャンプへと帰ろうとした時、ノアハから
『ダーリン! 被害者の中にシオン教徒が
今、被害者たちを
私たち全員に、
私が
『待て! 今すぐそっちに帰るから、なるべく時間を
くれぐれも手は出さないように! 敵が一人だけとは限らないからな!
『黒色のようにも見える赤です。
『そうか。どうやら操られているようではないな?』
『はい。精神支配も確認できませんでした』
『分かった。 今すぐにその近くの
『はいっ!』
「ハニーたち。今からベースキャンプに帰還する! 準備をしてくれ!
なお、ベースキャンプにはシオン教徒が紛れ込んでいた。 人質を取ってテントに立てこもっているらしいから、注意してくれ!」
"はいっ!"
◇◇◇◇◇◆◇
安全のため、直接転移することはやめて、俺たちは
ベースキャンプがある崖からは、身を乗り出して下を
360° すべてが見渡せる位置にベースキャンプは設営してある。
だから、ベースキャンプがある
どうしたものだろうか?
ひょっとすると、今助けてきた女性たちの中にも
ゴブリンどもに捕まっていた女性たちの"魂の色"を確認したが、
だが、相手はシオン教徒だ!
魂が
だから、非常に
信仰というのは、ある意味で恐ろしい……。
ん? 女神シオンへの信仰?
お! そうだ!
「お嬢さん方。この中にシオン教徒はいるかい?」
女性たちはお互いに顔を見合わせながら首をひねっている。
「それじゃぁ、今から言う俺の言葉を繰り返してくれねぇかな」
"は…い……?"
女性たちの顔には『
「女神シオンはクソビッチ! …… はい! 繰り返して!」
"女神シオンは……"
「
やはり一人いた!
一人の女性が
女性の手が俺に触れた瞬間、すかさず神術で深い眠りへと落としてやる……
俺につかみかかってきた女性は、まるで
どうやら
と! そう思った時である!
『ダーリン! 危ない! シオン教徒が! ……』
ノアハが
なんか
俺たちをぺちゃんこにするために、敵が
"きゃああっ!"
被害女性たちから
万事休すだっ! ……と、普通ならそう思うし、実際にそうなるだろう。
ははは! だがなぁ……そうは
ズッ……ガァァァァーーンッ!!!
大きな岩はシールドに当たり、大きな音を立てながら
当然俺たちは無傷だ!
視界はほぼゼロだ!
その視界ゼロを利用し、みんなを連れてベースキャンプがある
ベースキャンプから少し距離を取った場所に転移し、シールド発生装置と野営用のテントを新しく設置して……
シールド発生装置を起動してシールドを展開させると、すぐに
そこには女性が二人いる!?
一人の首には
そして、その刃物を突きつけている女が、
「ひゃああっはははははっ! ざまあみろ邪神め! ひゃはははははっ!」
「おい、お前さん、何がそんなに嬉しいんだい?」
「これが喜ばずにいられ……えっ?? ええっ!?」
相手が
そして、大喜びしている途中で突然、俺に声を掛けられて驚き、"キョトン"としている女性の背中をチョイと押してやった! かる~くだよ。 かる~く……。
「うぎゃぎゃぁぁぁぁっ! た、助けてぇ--ーっ! シオン様ぁぁぁぁぁ!」
……………………ズッチャ……
この
女性が地面にぶつかって
この
その音の小ささゆえに、たった今この下で一人の女性が死んだという事実までもが小さな出来事だったかのように、死の事実がぼやけてしまうかのように感じてしまうのだった。
◇◇◇◇◇◆◆
サイクロプスから救出した女性たちすべてに対して、女神シオンの悪口を言わせてみたが……全員が
だから恐らくは、もう他にシオン教徒はいないと思われる。
「怖かっただろう?」
「二度も救っていただき、ありがとうございました」
刃物を突きつけられて
俺が彼女を後方へと転送した直後にハニーたちがちゃんと修復神術を施してくれたので、彼女の首につけられた小さな
よかった! さすがはハニーたちだ!
「お前さんを
「あのう……でも、ひょっとするとサイクロプスを
「え? あの女性はなんか言っていたのか?」
「はい。
『どうだい? 私の
あははははっ!』
って……。
私たちが…うう、私たちが
「なに!? あの女は『
「はい。そうだと思います。
あたしも、あの女の
サイクロプスとあの女が……あのう……そのう……している時も、色々と命令していましたし、サイクロプスたちも素直にその指示に従っていましたので、間違いないと思います」
人質にされていた女性と崖下で潰れている女と一緒に、同じサイクロプスの群れに
「なんということだ! そうだったのか!
おっとそうだ! お前さんたちのテントの中にある
昼食は期待しておいてくれ!
彼女たちと別れた俺は、
彼女の魂の履歴をコピーしておいた方が良いと思ったからだ。
彼女の魂の履歴から、ダンジョンマスターに関する情報や、シオン神聖国に関する情報が得られるかも知れない。 そう考えたのであった。
うわっ! こりゃ
女の死体は
ほとんど黒に近い色をしていたからだ。
それゆえ、魂の履歴のコピーが完了すると、すぐに魂は、"
修復したばかりの死体だが、
スケルトンにでもなったら面倒だからだ。
◇◇◇◇◆◇◇
「お前さんはシオン教徒なのか?」
「はい。そうです。 聖女様」
ゴブリンども捕まっていた女性……
俺の隣には聖女マルルカと勇者ユリコがいる。 他には誰もいない。
この事情聴取のためだけに、
女性は俺が質問しているのに、聖女マルルカに向かって答えている。
ユリコはそんな様子を見ながら
「お前さんも『魔物使い』なのか?」
「そうです。聖女様。でも私は、あの
ルディバインと違って、ちゃんと
あいつらとは
いや、別にゴブリンとやっていたかどうかなんて聞いていないんだけどなぁ。
そんなことはどうでもいいことだし……。
でも、この女、ゴブリンと
そんな女がなんで他の女性を
魂の色を見る限りでは、そんなことをするようには思えないんだがなぁ……。
「ほおう? お前さん
「聖女様! 当たり前です!
誰があんな
「バカめ!」
「おい! マルルカ! なんであいつの言うことを聞いてんだよ!? ったく!」
「ふん。冗談ですよ、冗談!」
困ったもんだぜ! ははは。
「自分がされて
「そんなのは知らないですよ!
ゴブリンたちが勝手にやっていることだから、私の知ったこっちゃないです!
……と、
「だって」
マルルカも面倒になってきたようだな? 『だって』だって。 ははは。
しかし、だからなのか? この女の魂の色がほぼ青、青に近いグリーンなのは?
自身では
これは
ある意味では
「お前さん、目の前で女性たちがゴブリンどもに
「思ったわ! 私はまだ未経験なので、
どんなことをするのか見て、とても勉強になったわ。
聖女様、貴方様にはこの気持ちが分かるのではありませんか?」
「それは……確かに興味はありますが、目の前で人が苦しんでいるのに助けず、観察しようという考え方というのか、その気持ちは、私には全く理解できませんよ。
いいですか? 目の前で苦しんでいるんですよ? 助けたいと思うでしょ?」
さすが聖女マルルカだ!
いや。 というか、助けたいと思うのが当たり前のように思えるんだけどなぁ?
「
彼女たちの
こんなヤツをこのまま生かしておいてもいいのだろうか?
こんなのと話をしているだけで、
「おい、マルルカ。 シオン教徒って、こんなのばっかりだな?
女神シオンがもしも本当にいるとしたら、そいつこそが
「おのれぇーーーーっ! 邪神めっ! 女神様を
聖女しか相手にしていなかったゴブリン使いの女が、俺に
「シャットダウン!」
女はガクンとその場に
彼女の基本システムをシャットダウンしたのだ。
◇◇◇◇◆◇◆
「基本システム起動!」
「……はっ!?
「お前さんを
今のお前さんはな、どこにでもいるごく普通の町娘程度の能力しかねぇ」
「なんですって!?」
「これからお前さんをゴブリンどもの
お前さんが見ている前で
女は顔面蒼白になる!
ぶつかり合う歯の音が聞こえてきそうなくらい、ガタガタと
「……や…めて…くださ…い。 どう…か、…たす…けて…くださ…い……」
恐怖による身体の震えのためか、言葉もまともに話せないようだ。
「お前さんの痛みや苦しみなんざ、こっちとら、百年でも
お前さんもそう言ってたもんなぁ? はははは!
では! 判決を言い渡す!
「ぎゃあああぁぁぁぁっ! 嫌だぁーっ! 助けてぇ! 聖女様! 助け……」
「転送!」
ゴブリン使いだった女は、
聖女マルルカも、勇者ユリコも真っ青になって
◇◇◇◇◆◆◇
「転送!」
「……」
だがまだ、オークドゥの集落へ転送してから10分も
この手を使うのは二度目だ。
この女を
彼女を襲う
「ううう……うわぁーーーん! ごう゛ぁがっだじょおう~」
『
ちょっとは
聖女マルルカが泣き
頭を
「完全浄化! 衣服等を装着!」
女は相変わらず声を上げて泣いている。
「どうだ?お前さん。
女は泣きながら『こくり』と
「もう一度ゴブリン使いになったとして……
目の前で女性が
「助けます! ゴブリンたちに命令して女性を助けます! きっと助けます!」
言葉にも、目にも力がこもっていた!
今は彼女に
その状態で質問したので、彼女が
だから断言できる! 今の彼女の言葉には
「お前さん……オークたちに襲われているときに、必死に女神シオンに助けを求めていたようだが……どうだ? 女神シオンとやらは助けてくれたか?」
「い、いいえ……」
「俺がこっちに転送で
お前さんは
シオン様とやらは、助けてくれなかったのか?
「……」
最初から
そうじゃないと、女神シオンがそのことまでをも
「なぜ助けてくれねぇと思う?」
「分かりません」
「それはなぁ……女神シオンなんてものは存在しねぇからだ!
助けてくれるはずの女神自体がいねぇんだよ。この世界の神は俺だけだからなぁ」
「そ、そんなことは……」
「まあ、じっくりと考えてみるこったな。
どんなに考えてもいねぇもんはいねぇんだけどな。 ははは」
女神シオンがいないことを証明するのは困難だ。
特に存在すると信じ込んでいる者に対して『そんなものは存在しないのだ』ということを信じさせることは
自分から切り出してなんだが……
これ以上話をすると
聖女マルルカが複雑な表情をして俺をじっと見る。 どうもいつもと様子が違う?
女神シオンが存在しないと俺が言っても、
「シン。あなたのことを邪神だの、ジゴロだのと言って申し訳ございませんでした」
そう言って、深く頭を下げてマルルカはテントの外へと出て行った。
勇者ユリコは
俺にはマルルカの真意も、ユリコが
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