第0014話 敵は仮すべからず時は失うべからず

 アマゾネス・オーク・クイーンに予約を入れておくか……。


 獣人たちにぎぬせ、むすめさんをひどわせようとした"神殿騎士隊長"とやらを後で転送してやるつもりでいるからだ。


『もしもし』

『はい、もしもし! 上様!』


『あのさあクイーン悪ぃけどな、もうちょっとしたら、また1人クソ野郎をそっちへ送ることになると思うんだが、いつものようにたのめるかな?』


『はい、もちろんでございます! いつもの広場に部下を待機たいきさせておきます』


『ああ、それじゃぁよろしく頼む』

『はい!』



 俺たちが神殿しんでん敷地しきちへとあしれようとしたその時に、神殿からひげたくわえた大柄おおがらな男が、2人の騎士をともなって出てきた。


 どうやら、ひげたくわえているヤツが隊長のようだ。

 わなめた獣人家族じゅうじんかぞくがいるのを見つけるとこちらへと近づいてくる……。


「おお、お前たち! ちゃんと飲食費いんしょくひ罰金ばっきんはらえたようだな!

 ……ん? なんで娘がそこにいるんだ?」


 神殿騎士隊長らしき男は、自分の "獲物えもの" である少女が、獣人たちのうしろにかくれるようにしているのを見て表情がけわしくなる。


「てめぇが、この家族をめた神殿騎士隊長か?」


 魂の色は……赤黒い。


「誰だ貴様きさまは!? みょうな言いがかりをつけるとただじゃおかんぞ!」


「ええぇいっ! ひかえよ! おろもの! こちらに御座おわすおかたをどなたと心得こころえる!

 おそおおくも、こちらのおかた上様うえさまなるぞ! 上様うえさまへの、その無礼ぶれい物言ものいい!

 だんじてゆるすわけにはいかん! そっくびをはねてくれる! そこへなおれ!」


 スケさんが騎士隊長をしかりつけ、剣をかまえる!

 男はハッとした表情を浮かべ、即座そくざひざまずく……。


「も、申し訳ありません……ですが、私には全く身に覚えのないことです。

 めたとは如何いかなることでしょうか?」


「ほぉおう? このおよんでしらるつもりか?

 神である俺に、ごまかしが通じるとでも思っているのか?

 てめぇは、この人たちに無銭飲食むせんいんしょくぎぬせて、娘を奴隷商人に売らせようとしただろう? 分かってんだぜ?」


「し、信じて下さい! 私は潔白けっぱくです。……恐れ入りますが証拠しょうこは、証拠しょうこはあるのでしょうか?」


「てめぇとつるんでいた奴隷商人がすべて"ゲロ白状"したぜ。しらばっくれても無駄むだだ!」

「ど、どこにその奴隷商人がいるのですか? そいつの話を聞かせて下さい」


 奴隷商人がこの場にいないから、おおせるとんだようだ。


 俺はマップ画面で奴隷商人をターゲット指定し、こちらへ転送する!


 いきなり神殿前に転送された奴隷商人はひどくおどろいている。

 騎士隊長も、目が飛び出んばかりに大きく見開き、びっくりしている。


「ほらよ。 コイツがすべて白状はくじょうしたぜ。 なぁ、お前?」

「……は、はい! この男です! すべてこの神殿騎士隊長に指示されました!」


「ええーいっ! もはやこれまで! 死ねぇっ!」


 けん八双はっそうかまえてふかみ、俺の左肩をねらう!

 ヤツは俺を、"袈裟懸けさがけ" にろうとしたのだ!


 迅雷耳じんらいはみみおおうにいとまあらず!


 スケさんも、カクさんも、一瞬の出来事に反応が遅れる!

 ヤツは一瞬『ニヤリ』とする。 勝利を確信したかのように……。


 ……だが次の瞬間! ヤツは驚愕きょうがくすることになる!


 俺が、右手みぎて人差ひとさゆび中指なかゆびで、ヤツの剣をはさんでめたからだ!


暴虎馮河ぼうこひょうがゆう(命知らず)だなぁ? …… 四肢粉砕ししふんさい!」


 ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!


「修復!」


 修復後、すぐに隊長を"見えざる神の手"で拘束して、ロープでグルグル巻きにしてから"ふんどし一丁"にする。


 コイツが身につけていた武器も防具も下着さえも消し去ってやった!


 俺たちの仲間には女性も多い。

 だから、ふんどしだけは身につけてやることにした。


 粗チンは目の毒なのだ!

 ならば、立派りっぱならいいのかって? いや! 立派でも当然ダメだ!



「てめぇはアマゾネス・オークへのにえにする! 抵抗ていこう無意味むいみだ! あばよ!」


『もしも~し、クイーン、今から転送するな。 頼む』

『はい。うけたまわりました』


「ま、まま、待って下さい! 申し訳ありませんでした! 心からおび……」

「転送!」


 なんか面倒くさいので "ちゃっちゃ" と転送してやった。


「シンさん、すみません、油断しました」

「ああ、大丈夫だ。気にするなって」


 奴隷商人がこしかして、脂汗あぶらあせをタラタラながしている。


「おう! 証言しょうげん、ご苦労くろうだったな!

 お前もアマゾネス・オークのにえになりたくねぇんだったら、ちゃんと被害者ひがいしゃを助け出せよ! いいな!?  じゃあな!……転送!」


 先ほどまで奴隷商人がいた場所へと転送してやった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 神殿の方がなんかザワザワしている。

 統括神官も俺たちの存在に気が付いているのかも知れない。


 だが…統括神官一家と対決する前に、亜空間倉庫あくうかんそうこから獣人たち用に作ったテントを取り出して神殿しんでんまえ広場ひろば設置せっちする。


 西部開拓詐欺被害者せいぶかいたくさぎひがいしゃの獣人たちには、ここで待っててもらうつもりだからだ。


「確か7家族だよな? ということは……まだ部屋数は足りているな。よし」


 食堂しょくどう大量たいりょう料理りょうりもの生成せいせいしておくか……。


 えーと、俺と西部に来た23人に、ここで仲間になったのが5人、計28人か?

 まぁ、これだけの量があれば足りるだろう……。


 料理、飲み物を、おそらくだが、充分じゅうぶんすぎるくらいに用意しておく。



 しかし、俺の仲間も入れると全部で何人になるんだっけな?


 神子が7人に神殿騎士が2人、"魔物まものあふれ事件" で仲間になった冒険者で神殿騎士見習みならいの4人に、神殿騎士受験生が3人。


 そして、キャルにシャル、俺にシオリで……計20人。


 それに、開拓者かいたくしゃ28人をくわえて……全部で48人か!?

 いつのにか、ずいぶんと大所帯おおじょたいになったなぁ!



「開拓者のみんな、聞いてくれ!

 俺たちはこれから統括神官一家をらしめに行くが……

 わりぃけどお前さんたちはこのテントの中で待っててもらうことにする!

 食堂に料理をたっぷりと用意しておいたからな。 よければ食ってくれ。

 バイキング形式だから、好きなものを好きなだけ食ってもいいぞ!」


 開拓者、獣人のみんなは俺に会釈えしゃくしてテントの中へと入っていく。

 新しく仲間になった獣人族の家族なんだろう……驚きの声を上げている。


 俺の前をリーダー格の男が通ったので……


「リーダー! 今日メンバーに加わった家族を部屋に案内してやってくれ。

 できれば、設備せつびの使い方も教えてやってくれるとありがてぇんだが……」


「分かりました。私の方から説明しておきます。ご安心下さい」


「おう! 頼むな。 よろしく!」


 獣人のみんなが、テントの中に入ったのを確認してから、俺はシールド発生装置を生成してテント入り口付近に設置すると同時に起動した。


 俺たちがこの場を離れている間、西部開拓者の獣人たちを守るためだ。



 ◇◇◇◇◇◇◆



 さあ、いよいよ神殿に乗り込むぞ! と気合いを入れて神殿のとびらの方へと向かうととびらひらき、中から統括神官らしき男が現れた。


 インガが俺の後ろにサッとかくれる!


 スケさんとカクさんは剣をくと、俺をかばうように前に出る!

 そして剣を正眼せいがんかまえて、男をにらけている。


「いやぁ~インガ! お帰り! こんなに早く帰ってくるところを見るとやはり思った通り、神様のお眼鏡めがねにはかなわなかったようですね。 ははは」


 スケさんとカクさんからさきを向けられても、全く動じないとはな……なかなかきもすわわったヤツだ!


「残念だったなぁ。 インガは俺の嫁になるぜ。 お眼鏡めがねかなったっつうことだ!」

「誰です? あなたは? インガを嫁にする?」


「ほおぅ? お前さん俺の顔を見ても俺が誰だか分からねぇのか?」

「ん? ああっ……これはこれは、大変失礼しました。 まさか神様がこんなに若い方だとは思ってもみませんでしたので……」


 統括神官はゆっくりとひざまずく。

 しぶしぶ感が漂う。


「てめぇがインガをこき使ってきた統括神官か?」

「"こき使ってきた"っていうのは心外です。 私たちはインガをとても大切に育ててきたんですよ。 この町のみんなに聞いて下さい」


 神殿の中で様子をうかがっていたのか、俺が神だと分かると、バラバラと神官たちが中から出てきて俺の前でひざまずく。


 その様子を見て、スケさんとカクさんはえず剣をさやおさめた。


ぎゃくに私たちはこまっていたんですよ。 インガがうそばっかりつくので……

 町のうわさにもなっていますよ」


 インガが俺の後ろでふるえている……かたふるわせ泣いているようだ。


 賢者けんじゃ愚舌ぐぜつまどわず……そんなもないうわさおどらされるのはほんの一握ひとにぎりの愚者ぐしゃのみだ。 だが、そういう愚者ぐしゃは声が大きいからたちが悪い。


「てめぇは正直者しょうじきものか?」

「もちろんでございます! うそなどついたことがありません」

「なら問題はねぇな! リブート!」


 突然、統括神官がうしない、地面じめんした。


「はっ! どうしたことだ?」


「教えて欲しいか?

 てめぇを、これから一生いっしょううそがつけねぇようにしてやったんだ。

 いや、うそはつける……だがな、うそをつくとなぁ、てめぇの全身に激痛げきつうが走るようにしてやった。 てめぇはうそがつけねぇ正直者しょうじきものなんだろう? 問題ねぇよな?」

「……」


「じゃ、もう一度聞くぞ? インガをずっと虐待ぎゃくたいしてきただろう?」

虐待ぎゃくたいなんてして……ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


 統括神官は地面を転げ回る! それは数秒間続いた!


「はぁはぁはぁ……インガは大切に……ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


 統括神官の妻と娘も何事が起こったのかと外へ出てきた。

 神官のもとへと駆け寄る。


 俺はこの妻と娘にも統括神官と同じようにしてやる……。


 まずはナノプローブを注入!


 そして、声を発するタイミングで起動されるイベントに、嘘をつくと体中のナノプローブがあばれ回り、激痛げきつうをもたらすようにプログラミングした"イベントハンドラ"を割り当ててやったのだ。


「リブート!」


 直後、統括神官の妻と娘は一瞬意識を失う。

 さあそれじゃぁ、娘を念のためにただすとするか……。


「おい! 娘! おめぇ、インガの代わりに俺の嫁候補になろうとしただろう?」

「はい。インガがどうしても嫌だと……ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


 統括神官の娘も激痛にえかね、地面じめんころまわる!


「はぁはぁはぁはぁはぁ……ご、ごめんなさい……うう……」


 娘の方はまだ素直すなおだな……。


「娘の方は素直すなおいたぜ? どうだてめぇも素直に認めたらどうだ?

 インガを虐待ぎゃくたいし続けてきたんだろう?」


「ミスをしたからしかっただけ……ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


 こんな事が何度か繰り返されると、さすがに神官も観念かんねんしたのか……


「ああ、そうだとも!

 特に俺の機嫌きげんが悪い時にはな! インガをボコボコにしてやったぜ!

 ちょうどいいらしになったからな!

 痛いのを我慢がまんして、必死にえるインガの顔がたまらなかったぜ!

 ゾクゾクするんだよな。

 だがな、俺たちはひろってやって、そだててやったんだぞ! 文句もんくあるか!?」


 ああ……クソだな! 確定だ!


「インガ、お前さんを虐待ぎゃくたいしてきたコイツらを、俺はぶっ殺してぇんだが?」

「「「ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」」」


 統括神官親子はふるえ上がっている。

 コイツらの魂の色はそろってオレンジ色だ。 人殺しまではやってないが、かなりの悪だな。


「私を思ってお怒り下さることはとても嬉しいです。

 ですが、殺さないであげて下さい。 魂の色もオレンジですし……。

 もういいんです……私は今とても幸せですから。

 もう、そんな人たちのことなんかどうでもいいです」


「インガ、お前さんは優しいな。 それでこそ俺の嫁になる子だぜ。

 よし! 分かった!  おい! てめぇらには、神殿からの追放ついほうわたす!

 当然だが、今後は神官を名乗ることも禁止する!

 とっとと荷物をまとめて出ていけ!

 ぶっ殺されなかったことをせいぜいインガに感謝かんしゃすることだな。以上だ!」


 元統括神官の親子はすごい勢いでこの場を立ち去った。


 かんおおうてことさだまる……だな。


 ヤツらが死ぬまでに…これからどう生きるかが見ものだ。


 まぁ……うそがつけない身体になっているから真っ当に生きるだろうけどな。

 一応、"輪廻転生りんねてんしょうシステム" には、要注意人物ようちゅういじんぶつとして3人を登録しておこう。



 その後、俺は "たましいいろ" を見て、新しい統括神官と神殿騎士隊長を任命にんめいした。

 今度はふたりとも "スカイブルー" に近い青色をした魂を持つ人間である。


 一応いちおうねんのためにぜん神殿しんでん関係者かんけいしゃたましいの色を確認し、たましいくさったヤツは排除はいじょするつもりだったのだが、その他の神殿関係者はすべてたましいの色が"青"から"緑色"までの範囲内であった。


 悪いのはトップだけだったのか……。

 ならば、これでこの神殿も、もっともっとよくなるであろう。



 ◇◇◇◇◇◆◇



 俺たちは、今、獣人たちのテントにいる。


 テント内の食堂に神殿関係者とインガの親友しんゆう、ツェータもまねいて、みんなで昼食をとっている。


 料理は、いつものようにバイキング形式で、各種かくしゅ大量たいりょうの料理を用意してある。

 飲み物もアルコール以外を各種用意した。


 インガが俺の左隣ひだりどなりすわり、スケさんが右隣みぎどなり正面しょうめんにはカクさんがすわっている。

 インガの正面にはツェータが座っている。 会話がはずむ。


 ツェータから、そして、インガがおさなかった頃に育ててくれた神官から、インガの小さい頃の話が聞けたのがよかった。 インガを"より一層いっそう身近みぢか"にかんじられるようになったからだ。



 ズババババババババーーーン!

 ズドーーーーーーーーン!ガラガラガラ……


 突然とつぜん大きな音がしたかと思うと、地面じめんれた!

 テントの外がさわがしい!?


 俺はスケさんとカクさんをともないテントの外へと向かう!

 他のみんなにはテントの中で待機たいきさせた。


「うわっ! ひでぇ!」


 テントの外に出て最初に目に入ったのは、廃墟はいきょのようになった神殿しんでんであった!

 神殿関係者すべてがテントの中にいることが幸いである!


「ファイヤーボールをはなて! そこにいる邪神じゃしんほろぼせ!」


 ズババババババババーーーン!


 ファイヤーボールが俺たち目がけて飛んでくる!

 ……だが、ファイヤーボールくらいでは防御ぼうぎょシールドがやぶれるはずがない!


 敵は、黒いローブを着た魔導士。 20人程いるようだ。

 ん? 先頭で指揮しきっているのは……もと統括神官とうかつしんかいん?……あちゃぁ~。


 "てきすべからずときうしなうべからず……。"


 地球、中国の歴史書『史記しき』の中の、この言葉が頭をぎる……。


 やっぱりてきなさけは禁物きんもつだなぁ。

 ちゃんとやれる時に始末しまつしておくべきだった……ちょっとだけ後悔こうかいする。



 スケさんとカクさんに、攻撃神術の練習をさせるにはいい機会であるのだが、現在シールドの中にいるため、スケさんとカクさんでは敵に対して攻撃神術が使えない。


 彼女たちは現在、"防御ぼうぎょシールド展開てんかい能力のうりょく" をゆうしていないため、シールドしに攻撃こうげき神術しんじゅつはなてないのだ!


 防御ぼうぎょシールド展開能力てんかいのうりょくがないと、はなとうとする、例えば "ファイヤーボール" のような攻撃神術を、攻撃時に "シールドでカプセル化" できない……

 シールドでカプセル化ができないということは、展開中の防御シールドを越えて、つまり、シールドの向こうがわには "ファイヤーボール" を飛ばせないのである!

(→第0013話参照。)



 ならば俺がやるしかないな。


 火災かさいの時に延焼えんしょうふせぐ目的ために神殿しんでん周囲しゅうい広場ひろばになっているものの、ここでファイヤーボールをつのは、どうもマズいような気がする。


 それで、えずウインドカッターというかぜやいばてきはなつことにした。


 シュフィュン! シュフィュン! シュフィュン!

 …… うがっ! ぐげっ! ぐふっ!

 シュフィュン! シュフィュン! シュフィュン!

 …… がはっ! ぐぐっ! どふぇっ!


 こんな感じで、魔導士まどうしたちはじゅん両断りょうだんされててた。

 なんとも呆気あっけなくてき魔導士まどうしどもの殲滅せんめつは完了する。


 残るは元統括神官のみである。 が……


「ば、ばかな! シオン教の優秀な魔導士たちがこんなにあっさりと……ぐはっ!」


 元統括神官が、驚きの言葉をはっえる前に、ヤツの首は飛んだ! 呆気あっけない!


 ん? シオン教が "どうのこうの" とか言ってたぞ?

 確かにコイツらは、以前、タチアナをさらったヤツらと格好かっこうているな?


 元統括神官の "魂の履歴" を確認すると、インガがきさき候補こうほえらばれたころから、シオン教と接触せっしょくするようになったようだ。


 ヤツの、元統括神官のむすめを、インガのわりに"きさき候補こうほ"として送り込もうとしたのも、ヤツのむすめに俺の寝首ねくびかせようとしたためだったらしいが、それもシオン教徒から依頼いらいされたのである。


 その計画が頓挫とんざしたため、俺を直接ちょくせつねらうのは次の機会きかいにして、神子みこをゴブリンにおそわせる "プランB" に移行いこうしたらしい。


 そして、スケさんの心に大きな大きなきずのこしたが、そのプランBも失敗し、魔物まものあふれを起こさせる "プランC" へと移行いこう。 で、これも失敗!


 最後にプランDというか、ほとんどやぶれかぶれでナルゲン・ニムラが、タチアナをさら人質ひとじちって俺を殺し、神子たちを性奴隷せいどれいにしようとする暴挙ぼうきょに出たのだ!


 ナルゲン・ニムラとは、タチアナをさらい、最終的に俺が"ミンチ"にしてやった例の黒ずくめの男のことである。

(→第0005話参照。)



 元統括神官から聞いた情報で、俺がこの地に来ていることを知ったのであろう。


無謀むぼうにも神がれている護衛ごえいは神殿騎士がたった2名! それも女性だけだ!

 ねらうのなら今だ!』


 とでも、きっと思ったに違いない。

 今回、ヤツらシオン教徒どもが俺たちを襲撃した理由は多分そんなところだろう。


 しかし、この町に20人ものシオン教魔導士が潜伏せんぷくしていたとはなぁ。おどろきだ。

 ゴキブリじゃないけど、まだまだ他にもかくれていそうだ……。



 シオン教の陰謀いんぼう……今回、俺が帰還きかんしてから、これまでに起こった一連いちれんの事件は、すべてはこの町から始まったことになる。


 元統括神官たちが、娘を俺のそばへと送り込むために、インガを始末しまつすることまでは考えなかったことだけが救いだ。 インガが殺されなくてホントによかった。


 やはり元を絶たないとダメだな。 シオン教を完全にたたつぶさねば……。


 ひょっとすると、西部開拓詐欺せいぶかいたくさぎにもシオン教が一枚いちまいんでいるんじゃないかと俺はふと思った……まさかなぁ……。



 そんなことを考えていると……。

 物陰ものかげかくれていた、元統括神官のつまむすめが逃げ出した!


 俺は "見えざる神の手" で彼女たちをとっつかまえ、こちらへと運ぶ。


「おいおい! 折角せっかくいのちを助けてやったのに襲ってくるなんて……お前らはバカか?」

「「お、お助け下さい!!」」


 女性を殺すのは夢見ゆめみが悪くなりそうだ。


 うそに対するペナルティはそのままにして……俺や、俺の仲間、神殿や神殿関係者に危害を加えようとすると、"はいのようになって消滅しょうめつする" ようにプログラミングしたイベントハンドラを、動作時どうさじ起動きどうされるイベントにててやった。


「リブート!」


 元統括神官の妻と娘はともに一瞬いっしゅん意識いしきうしなう。


「さあ、これでもしも今後、お前らが俺たちや神殿関係者に危害きがいくわえようとするとお前らは、はいのようになって消滅しょうめつするぞ! そうなったら蘇生そせい無理むりだ!

 くれぐれも忘れるな。二度と俺たちにからんでくるなよ! いいな! 次はねぇぞ!」


「「はい!!」」


 元統括神官の妻と娘を解放かいほうした。

 彼女たちは這々ほうほうていといった感じでげていった。


 もちろん、魔導士と元統括神官の魂は、"奈落ならくシステム" へとほうんでやった。

 クソ野郎どもめ! 地獄じごくくるしみをあじわうがいい!


 しかし、ひでぇことをしやがる! 神殿がめちゃくちゃじゃねぇか!


 外が静かになったためか、神殿関係者もテントの外へ出てきている。


 まるで空爆くうばくでもけたかのような……てきのファイヤーボールで廃墟はいきょとされた神殿しんでんを見て呆然ぼうぜんとしている。 中には泣いている者もいる。


「修復!」


 瓦礫がれきもれるかのようになっていた神殿しんでん廃墟はいきょは、みるみるうちに、元の姿へと修復されていく!


「ああ、偉大なる神よ! ありがとうございます!」


 みんなが手を合わせて俺をおがむ。

 なんか落ち着かないぜ。 おがまれるってのはなぁ……。



 ◇◇◇◇◇◆◆



 俺たちは食事をさっさと切り上げた。


 シオリとは現在念話ねんわが通じない!? いや予感よかんがする!


 手早てばやくテントを収納しゅうのうした。 シオリたちのことが気になって仕方がない!

 気があせる!


 俺たちは、この町、ガランの神殿関係者とのわかれをしむ時間じかんさえもが、もったいないかのように、"ごく簡単な挨拶あいさつだけ"をわして、新たな仲間になった獣人家族も一緒に、みんなでノルムの町の神殿前広場へと転移した!


 シオリが念話ねんわに出られない理由が分かった!

 それどころではなかったのだ!!


 こちらも "シオン教徒の襲撃" を受けていたのだ!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る