第10話 大陸、ファンタージェン、戦乱の火種
カサンドラ王国にも外交問題はあって、ペール・ギュント王も様々な懸案に悩んでいたのです。
ファンタージエンなりに、人間世界の愛憎に相当するいざこざはたくさんあり、だからファンタージエンがよりヒロイックでドラマティックであるためのスパイスのような、?けしてお花畑のような、牧歌的平和的すぎるエデンの園だったとしたら、ファンタージエンという名前を名乗るのは、却ってこの宇宙に存在を許されない?退屈なユートピアでしかない……レーゾンデートルすら存在しない戯言の世界…例えば人間世界の神話にも様々な争いごと、諍い、いざこざのエピソードがあるのと、それは同様だったのです…
大陸には、先述のように「魔法」という叡智と奇跡の体系を国家理念としている、クレープたちエルフの棲むカサンドラ公国、「武」という理念をひたすら信奉する、力と権力の恐怖国家、肉弾戦を得意とするオークたちの国、”テリブライ王国”。宗教的な理想で平和と愛を建設理念とするノームやホビット、ブラウニーその他の敬虔な信心深い妖精たちの国、”スピリチュタ法王国”、その三つが隆盛していました。
三国相互に、一応は友好条約を結んでいて、交易や文化交流も行っていたのですが、やはりそれぞれに思惑や利害の対立もあり、長い歴史においては度々戦乱の世もあったのです。
三つの国の国境の中央には、誰も足を踏み入れたことのない、神秘的な「氷の宮殿」…通称「ホワイト・パレス」…が聳えていて、数多くの命知らずの冒険者がその謎を解こうとして探検を試みましたが、誰も帰還したものすらなく、未だなお、吹雪の嵐を纏った峻厳な宮殿は、不可思議な神秘のベールに包まれたままだったのです…
ファンタージェンのすべてのエネルギーの源は、大陸の地下にあるということが、一応確かめられてはいる、灼熱の「黒い太陽」でした。
かつて空にあった白い太陽は既に死滅していて、神話の中だけで語られる存在でした。
あらゆる森羅万象の源にして、その終わり…生産し、循環して、還元する、それらのシステムの大元がこの黒い太陽で、どういう原理で駆動しているのかは謎でしたが、神秘的な原理のその永久機関について、エルフ族の長老や、最高の知性を持つエリートのインテリゲンチャたちにはかなりリアライズされているらしかったが、他のすべての高邁な次元の事象と同様に、一般民衆は全く無知で無縁で…ですが、まあ、そういう不可知の出来事がたくさんあるというのは人間世界でも同じことなのは言うまでもないのですが…そうですよね?
<続く>
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