第34話:ドイツで母親と連絡し精神的に暗くなる

病院から出てきて、日本に居る母親から連絡が来る。

週に1回はメールをして!

と言われるのだが、これが困る。

一体何を言えばいいののか…

読み手の方々は察していると思うが、僕は文章が苦手だ。

ビジネスの様に形式と要件だけ言えば良いと言うなら書けるが

プライベートだと全く書けない。

取り合えず、なんらかのイベントが有れば送る様にしている。


長く話をしていないからと言う理由でスカイプコールをした。

「久しぶり」

「そっちは大丈夫?」

「一応生きてるよ」

「あら、そうなのね」


こんな会話だ。

後は聞かされるのはあまり心地よい話ではない。


「弟が借金踏み倒して、蒸発した」

「叔母が倒れたから東京へ連れて行こうか考えている」

「マンションが欠陥住宅で売って買いなおすか考えている」


…そんなヘビーな話します?

溜息しか出ない会話と言うのも珍しい。

まるで会社に居たダメ上司から共有される、価値のない話を聞く気分だ


「重たい話だね、大変そうだね」

トーンの高い声で

「困ってるのよねー」

と言っていた。


いつもそうだ。

結論が無い会話、今この状況、だからこう手を打つとか。

まぁ…この辺は昔と変わらない。

実家に居る時は、大体この手の話は、僕が聞き、質問をし、納得する答えへ導く。

慣れれば、楽だが、彼女の立場で考えると、メンタルはすり減る。


いずれにしても、今の僕にはそれをやる事は出来ない。

持っていかれる。

逃げる為、話題を変える

「鬱病の治療は長期になる」

「何年?」

「正確には言えないけど、5年以上」

「そんなに!!」

「みたいだよ」

「やっぱり日本で治療した方が良かったんじゃないの?」

「日本に居ても、金が持たないよ」

「それは家族なんだから出すわよ」

「どうせ費用請求するでしょ?あんまり心労を増やしたくないから止めておく」


僕の家庭は落ちた家庭だと思う。

父親が亡くなって、数億円単位のお金が落ちてきた

母親は、それを元に株や一等地に家を買ったのだが…

今となってはもう空だそうだ。

母親は、大半は学費で消えた。

と言うが…金の動きを見た訳では無いから、実際分からない。

だが、数億単位を10年未満で溶かすのは…


僕がまだ実家に居た時の話だ。

まだ、社会人になって間もない時、

家に金を入れろと言う

当時、6万

…まぁ良い、金で平和が買えるなら。

この頃、僕はパチンコやスロットもやっていた。

それでもギャンブルで作った金でやりくりするだけだった。

欲しい物も無いし、給与もそこそこ良かったから、貯金は貯まっていく。

基本的に投資額決めて、負けたら帰る、勝っても負けても深追いはしない。

そうやってやりくりして貯める、あぶく銭貯金だ。


その日、二十数万勝った日だ。

朝から晩までで店を3軒はしごし、時間は掛かったが、大金だ。

いつもなら銀行へ行くのだが、遅い時間で手数料は馬鹿にならないので

この日はそのまま帰った、家に帰ると母親が居た。

「ただいま」

顔色の悪い母がリビングの椅子で座っていた。

「おかえりー…」

「どうしたの?」

母親は重い口を開けた

「今月、家計が厳しいの…支払いが多くてー…」

またか、そんな気持ちだったが、取り合えず会話を続ける

「そう…幾ら?」

「約20万」

「それが無いとどうなるの?」

「持ってる物を売るしかないね…」

溜息をついた、この間に考えた、金を出すべきか。

この時の僕は甘かった、優しさが有った、責任を感じていた。

「分かった、今手元に20万有るから、これ使って」

財布からポンとだし、渡す。

母は驚きながらも聞いた

「どうしたの!その大金!」

正直に話す、嘘をついても仕方ない。

「パチンコとスロットで今日稼いだ」

母親の顔は明るくなった。

「ありがとう!助かるわ~!」


これが悪夢の始まりだった。

これから2年間、僕は勝ったら半分近く持っていかれ、負けたら補填は無い。

これで家の生活が楽になるなら…と思っていたが生活水準は一向に上がらない。

ご飯に反映される訳でもなく、日用品が増えている訳でもなく、何も変わらないんだ

結局何に使っていたのか、未だに分からない。


父親が居ない、つまり収入が無い。

年金とかは有ったのだが、それでも家族を養うには難しい。

予想は出来ている、だから金を作り、入れていた。

それ以降、月20から30万程入れていた。

過度の残業、週末は休日出勤か、ギャンブル、休みなんて無い。

そんな生活を延々と続け、当時の彼女も離れていく。

働いて、金賭けて、勝って負けて、金を持ってくる。

それが僕の仕事、そうしていれば、問題が起きない。

それが父親を失った、僕の家族だ。


家族でも金

自己犠牲に幸福はない


そんな事を思い出しながら、適当に会話をした。


きっと純粋に心配はしてくれている、でも、過去からの経験で信頼は難しい。

僕は薬を飲んで落ち着こうとする。


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悪い人では無いんですけどね、父が死んでから、全てが崩れた。

あの2年が有ったら、貯金2、300万有っただろうな、と言うのが心残り。

一人暮らしすれば良かったんですけどね、情に流されてはならない。


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