第17話

 真木が先導する形でその場から撤退した一行は、戦利品を何処に隠すか相談していた。

「やっぱり拠点を作った方が便利そうですね」

「その方が精神的にも楽だろうな。ただリスクが大きい」

 ゲリラ戦下での拠点作成ほど、敵に背中を向ける行為はない。であれば、最低限の備蓄を手に、現地調達という形で食い繋ぐ方が戦略的に適している。

「荷物持ちは引き続き斎ちゃん頼むよ。幸い、医療要員には故意に手出ししないよう言われてるしね」

「そうですね。重いと思いますがよろしくお願いします」

 バックパックにはテントと炊飯用具、そして戦利品が入っている。敵から奪ったものは、ナイフや食糧といった、最低限消費するものだ。

「これぐらい、へっちゃらです」

 バックパックを背負い直し、グッパグッパと両手を開いて見せる。そんな彼に微笑みながら、真木は魔術を待機状態にした。

(万が一が無いわけじゃない……)

 斎ちゃんを守る意味が二重で出来てしまった。まるでお姫様みたいだね。

 そんなことを思われてるなんて、この少年が知れば「俺は姫じゃない!」と顔を真っ赤にして怒り出すだろうが、幸い真木は声に出すことなく終わってくれた。

「歩きながらだけど作戦会議するよ。いい?」

「オッケーです」

「はい」

 返事を受け取り、一度周囲をぐるっと見回してから、話し始める。

「さっきは私達から攻めた。でも基本的な方針は生存ーーなるべく戦わないようにしたい」

「サバイバル演習ですものね」

 頷く雪村。しかし斎藤は待ったかけた。

「えっ、でも物資は敵から奪うって話だった気が」

「確かにそう言ったねぇ。でもそれ冗談!ちゃんと食糧も取ってあるし。さっき手に入った分を含めれば、あと三日は保つ筈」

 ただ、食糧に関してはそこまで重要度が高くない。真木自身は数日飲まず食わずでもどうにかなるし、雪村も見た目によらずタフだ。問題は、度重なる戦闘に、斎藤が耐えられるかどうか。

「どうにか逃げ続ければいいけど……」

 小さくそう呟く真木気付かないフリをしつつ、斎藤は心の中で拳を握った。

(男として、悔しい……)

 役割としては仕方ないにしても、守られるだけの今の状況が、彼には酷く後ろめたく感じた。

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