情と錠

作者 ゆきやなぎ

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★★★ Excellent!!!

こんなに甘酸っぱくて切ない別れは初めてでした。
幼い子供心に恋した男の子と見た立弘法様、外出禁止令の間に亡くなった初恋の相手、忘れられていく初恋の相手……。
たった1人の女性が持ってきたチョコレートだけが彼の供養。ひとりぼっちの少年は、チョコレートを持ってきた彼女にどんな想いを馳せたでしょう。
きっと来年も再来年も、50年を過ぎて無縁仏になっても彼女はチョコレートを持ってきて初恋の人へ思いを馳せるでしょう。
みんなが忘れていく彼のことを思い続ける彼女もいつか恋をして、結婚して子供を持つ日が来るかもしれません。
ですが、この初恋の相手への別れが彼女にもたらした想いを考えると、私にそんな相手がいなくて良かったと思う限りです。
寂しい人生ですが、毎年辛い記憶を辿りながら供養しに行かなくて済むからです。
それでも彼女には初恋の人がいてよかった。短いながら彼と触れ合った時間は、彼女の心に永遠に残り続けるのですから。
どうか彼女に素敵なご縁がありますように。

★★★ Excellent!!!

小さな頃の記憶なんて、存外あっさり無くなっていく。それでも心を形成する大きな要因であることは確かで、だからこそ、チョコを毎年買っていたのでしょうか。時の平坦さ、思い出の儚さが、適度に乾いた文章で淡々と語られていくのが内容ととても合っていてすんなり入ってきました。面白かったです。