第199話 一行怪談199

 母が幼い頃の写真には、今の母によく似た女が包丁を携えて、若かりし祖父を恨みがましい目で睨んでいる。


 父の影には時々、小さな子どもの影が隣に佇んでおり、最近はその子どもの影が出てくる頻度が多くなってきた。


 祖母が作る煮魚は絶品なのだが、煮魚を口に含むたびに祖母に対する誰かの恨みがましい声が頭の中で響くため、あまり好きではない。


 妹が髪を伸ばすようになってから、妹の髪の隙間から白い人間の指が見え隠れするようになった。


 姉の恋人の背後には、恨みがましい表情をした姉の生首が常にまとわりついているため、彼の浮気が姉にバレていることは間違いないだろう。


「弟の友人に聞かされた話だが、俺が言う弟とは俺の幻覚らしい」と語る兄は、弟である自分のことは誰だと考えているのだろう。


 叔父夫婦が飼っているペットはどう見ても、この間ニュースで騒がれていた行方不明の少女にしか見えない。


 叔母の再婚相手の顔は、見る人によって違う顔に見えるそうで、私が彼を見ると叔母と全く同じ顔に見える。


 夫に言われた通りに邪魔なものを片付けただけです、私にとって夫はゴミのような存在でしたから、彼を燃えるゴミの日に出しただけですよ。


 妻が産んだ子どもはどう見ても、私があの時海に捨てた上司の顔そっくりで、私と目が合った子どもはニヤリと笑い、「久しぶりだな」と上司の声で言った。

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