第180話 一行怪談180
ゴキブリが進化もせずに長い間生き残ってきた理由は、他の生物の寿命を少しずつ吸い取っているからだと聞く。
ある日を境にゴキブリが大好きになった友人の死因は、脳に植え付けられた大量のゴキブリの卵が孵化し、それらに脳を食い尽くされたことによるものだった。
突然腹が痛くなったので病院に駆け込み検査を受けた結果、腸内に侵入したゴキブリが内側から内臓を食っていることが原因だった。
「本当なんだ、家族の顔が突然ゴキブリの顔になって、『うまそうだな』と言って襲ってきたんだ、俺は反撃しただけなんだ、頼む、信じてくれ」とどれだけ訴えても、元の顔に戻った家族の死体を見て信じる者はおらず、俺は極刑を課せられた。
祖母が生前、イクラと称して私たち家族に振る舞っていたものは、着色されたゴキブリの卵ということを知ってしまった。
夜中、ベッドに入ったもののカサカサという音がうるさく、目を開けて電気を点けてみると、壁全体にびっしりと、無数のゴキブリが釘で打ち付けられていた。
最近寝つきが悪いため、寝ている自分を撮影したところ、映像が始まって真夜中の時間帯に、押し入れから女が出てきて、眠る私の口を開けてゴキブリを食べさせ、女は再び押し入れと戻っていき、撮影はそこで終わっていた。
散々息子を「ゴキブリのようだ」と侮辱してきたが、言霊というのは本当にあるのだと、巨大なゴキブリになった息子に腹を食い破られながら思う。
ゴキブリを助けるのもいいことかもしれない、と二日前に見つけたゴキブリを外に放したことを思い出しつつ、私をつけ回していたストーカーが無数のゴキブリに体を食いちぎられて絶叫する様を見ながら、ぼんやりとそんなことを考えた。
「ゴキブリが人間の言葉を理解し、ゆくゆくは人間を超える知能を持って、人間に反乱を起こすかもしれないということを、あなたは馬鹿げているとお思いですか?」と、床を這う人間ほどの大きさのゴキブリに、そう話しかけられた。
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