第177話 一行怪談177
原田さんの玄関前のポストの上に、「今週のお馬鹿さん」という言葉が書かれた張り紙と共に、呆然とした表情の男の生首が置かれていて、「あそこの家にまた泥棒が入ったのか」と、近所中でもちきりだ。
昨夜、我が家に侵入した泥棒が盗んだのは黒ずんだ小さなこけしで、我が先祖の悪行が晒されるかもしれないと、親戚中が怯えている。
先日、泥棒に入られた際に盗まれたテディベアが、口元と両手が赤黒く汚れた状態で玄関前に置かれていた。
近所の廃墟には月に数回ほどなぜか泥棒が入ることがあり、警察に連行される泥棒は皆、怯えた様子で絶対に廃墟の方を向こうとしない。
深夜、目当ての家に空き巣に入ると、血だまりに倒れ伏す幾人もの人々の姿を見て急いで逃げようとするも、侵入した窓の前に立った男が包丁を片手にニヤニヤと笑っていた。
「泥棒ー!」と叫ぶ声に反応して近くを走る男を取り押さえるも、男がひったくったと思しき鞄の中に、こちらをぎょろりと睨みつける女の生首と目が合った。
空き巣と鉢合わせし、慌てた様子の空き巣犯が私に掴みかかるも、すぐに天井にできた穴から出てきた毛深い腕が空き巣犯の頭を掴み、その腕は空き巣犯と共に天井の穴に消えていったので、今ではその天井の隙間に供え物を放り込んでいる。
祖母の鞄をひったくった犯人が見つかったという連絡が警察から入ったが、その犯人の脳味噌が綺麗さっぱりなくなっていたそうなので、電話を切った後に祖父の遺影を睨みつけると、祖父は私から目を逸らして赤く濡れた口元をぺろりと舐めていた。
長い間、泥棒稼業で生計を立てていた男が足を洗った理由は、空き巣に入った家の金を使おうとするたびに、お札も硬貨も血で濡れたように赤黒い色に変わってしまうからだそうだ。
警察が長年追っていた泥棒が遺体で発見されたが、その泥棒と全く同じ人相、体型、服装、DNAの遺体がこれまで十数体見つかっているため、どれが本物か見当もつかないらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます