第118話 一行怪談118

 家の人形の服は毎日、隣の田口さんと同じ服にいつの間にか変わっている。


 深夜二時に枕に耳を寄せると、さざ波の音と子どもの悲鳴が聞こえる。


 卵を割ると、二つの黄身と黄色い人間の歯が出てきた。


 栞にした押し花がどんどん色鮮やかになると、花壇の花はどんどん萎れていく。


 電子機器の調子が悪くなってから、私の視界に長い髪の女が映り込む。


 姉のプリクラに映っている姉の友人の腕は、一本多い。


 スーパーのチラシに特売の品として、私の娘の写真が載っている。


 回送の電車の窓に、無数の真っ赤な手形がいくつも浮かび上がっていた。


 台所で爆発音がしたと思ったが、いつものように母の頭が破裂しただけだった。


 兄の目に映る私の顔は、いつも顔のパーツが右にずれている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る