第116話 一行怪談116
折り紙で百合の花を折ると、いつも数時間後にはしおれてしまう。
しぼんだ風船は、川から上がった弟の顔に似ていた。
冷蔵庫から「出してくれ」とすすり泣く男の声が響く。
差出人不明の年賀状の正の字が、毎年一つずつ増えていく。
洗っても洗っても、浴槽に付いた赤い手形は消えない。
ある漫画の登場人物のセリフは、全て私の父が言った言葉。
切った爪は悲鳴を上げたかと思うと、手足を生やしてどこかに逃げていった。
ポストに投函された葉書のうち、真っ黒の葉書は処分しなければならない。
削除しても削除しても、私が兄を殺した一部始終の動画は消えない。
目薬を差したその日から、すれ違う人の顔に目がない。
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