第115話 一行怪談115

 嫌味ばかり言う姑が私に何も言わなくなったのは、私の胸元にある人面そうに「やかましい」と一喝されたからだろう。


 私のリュックサックは優秀で、私以外の人間が中に手を入れると手を喰いちぎる仕様になっている。


 肺に大量の細かい髪が詰まっている伯母は、家族の誰よりも有酸素運動が得意だ。


 腹痛に苦しむ父の腹が、抉れたように日に日に凹んでいく。


 肩がぶつかるほどの距離にいるのに、母の体温を感じられない。


 いつも笑顔を絶やさない彼女は、僕の胸を刺した時も変わらない笑顔を浮かべていた。


 全身の毛穴から笑が生えている息子は、あの時の案山子との子だろう。


 バームクーヘンとして出されたものは、切り分けられた巨大な目玉。


 ジュースを飲もうと冷蔵庫を開けると、飲み物は全て腐った牛乳に変わっていた。


 電話番号検索で私の携帯の番号を調べると、十年前の殺人事件の被害者の携帯番号と一致した。

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