第108話 一行怪談108

 私の口紅を塗った姉が泡を吹いて倒れており、上手くいったとほくそえんでヒ素入りの口紅を唇に塗る。


 コンビニのプリンターで印刷していると、印刷された紙の一枚にプリンターの前に佇む私の姿を描いたイラストがあった。


 洗濯物を取り込むと必ず見覚えのないパンツが一枚紛れていて、お金が浮くと思いそのパンツを着ている。


 エアコンのフィルターを掃除すると、緑や赤、青といった鮮やかな髪がごっそり詰まっていた。


 妻が作る肉料理が格段に美味くなってから、近所の妊婦が失踪する事件が頻発している。


 星がキラキラ輝いていると思っていたが、こちらを覗き込む巨大な目だと気づいてしまった。


 この時間になるとカウントダウンをする死んだ伯父の声が聞こえるのだが、その声が聞こえるようになってから家がミシミシと軋む音が大きくなった。


 いとこの葬式に行ってからというもの、私の耳元で「何で私なの?」と泣くいとこの声が響いて鬱陶しい。


 夢の中で「家族になってもいい?」という見知らぬ少年に頷いてしまった翌日、兄の妊娠が判明した。


 長袖の服を着た日はいつも、私の腕にいくつもの小さな手形が残される。

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