第21話 一行怪談21
コーヒーカップの底に残ったのは、雛人形の指だった。
クッションカバーが汚れたので洗うと、苺の柄だったカバーが髑髏の柄に変わった。
プールの飛び込み台から下を覗くと、プールから伸びる無数の白い手が「おいでおいで」をしている。
家族写真の兄の顔と、友人と撮った兄の顔と、実際に見る兄の顔は全て違う。
そうめんを湯がいたはずなのに、茹で上がったものを掬うと全て縮れた髪の毛に変わっていた。
天井の木目をぼんやりと眺めていると、木目が全て写真で見た先祖の顔になった。
鰻の蒲焼きと出されたものを食べてみると、どう味わっても人間のすね肉のように思える。
激しい夕立の中、数メートル先の景色ははっきり見えるのに、目の前の自身の手の輪郭がぼやけるのはなぜだろう。
近所の駄菓子屋のラムネの瓶にはビー玉の代わりに、猫の目が使われている。
姉の産んだ子どもは生まれつき目が四つ、手が四本、足が六本だが、念願の男の子なのでみんな喜んでいる。
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