第13話

「ガブリエル様。

 王家から急使でございます」


「分かった、会おう。

 ローズ嬢も一緒に来てくれ」


「はい」


 私が陥れられそうになった事件から一か月。

 ガブリエル様の弟子になった私は、鍛錬の日々を過ごしていました。

 正直幸せ一杯の日々でした。

 今日も手取り足取り教えていただき、とても幸せな時間を過ごしていました。

 それを邪魔するのが無粋な王家です。

 本当に王家は邪魔者です。


「王家からの使者、マエルです。

 こちらにマルタン公爵ローズ様はおられますか」


 私を見ながら言っていますね。

 私がローズだと気がついているのです。

 ですが顔を見たことがないから確認したのでしょう。

 しかしそのように非難がましい顔つきは許せません!

 私がガブリエル様から魔法を学ぶことは、国王も認めた事なのです。

 急使であろうと騎士に非難される覚えはありません。


「私がローズですが、何か用でもあるのですか?」


 つい言葉が厳しくなってしまいます。

 ガブリエル様との時間を邪魔されたのですから、怒って当然です。

 ですがあまりに怒ると、ガブリエル様に気の強い女と思われてしまいます。

 怒り過ぎないように我慢しなければいけません。


「国境の見張りからの報告を伝えさせてもらいます。

 ダデルスワル王国のフェルサン侯爵ジャックが、寄騎貴族士族を率いて攻め込んできました。

 我が国の辺境を護るマルタン公爵家の城代に連絡を入れるも、当主ローズ様に連絡がつかず、軍を整えて出陣する事はできないと、城代から出陣を拒否されたとのことです!

 申し開きがあるのなら聞いてくるようにと、国王陛下から直々に申し使ってまいりました!

 返答やいかに!」


 ヒェェェェ!

 言葉遣いは丁寧ですが、内心の怒りを押し殺しているので、言葉の端々に怒りが滲み出ています。

 まさにこれが慇懃無礼でしょう。

 しかし本当に私が悪いのでしょうか?


「ああ、その件は私が返答しよう」


「テンプル公爵家の令息で、騎士団長を務められるガブリエル様が、変わって返事してくださると言うのですか!」


「ああ、全ては今は亡きアルチュール王太子殿下の責任だ。

 マルタン公爵家は、殿下の意を受けたアンナが当主を務めていたのだ。

 家臣団もアンナに忠誠を誓っていた。

 そのアンナを殺したローズ嬢が当主になったから、全く言う事を聞かないのだ。

 つまり全責任はマルタン公爵家の内政にまで口をはさみ、主家と家臣団の間に不信の芽を生んだ、アルチュール王太子殿下に責任があるんだ。

 早い話が王家王国の責任という事だ。

 私がそう言っていたと、国王陛下にお伝えしてくれ」


 マエルが目を白黒させています。

 まったくの間違いではありませんが、真実とも少し違います。

 ガブリエル様は、こう言う事でなにをなそうとされてるのでしょうか?

 

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