第4話
あまりの出来事に終始狼狽してしまいました。
いえ、その魅力に囚われてしまって、挙措がおかしくなったと言うべきですね。
リュカ以外にこのような人がいるとは信じられなかったのです。
自信があるのは分かりますが、人間を次々と爆発される魔力に恐れることなく立ち向かい、私を怒らせるかもしれないのに厳しく叱責してくれたのです。
「魔晶石の作り方は知っているのか?
魔血晶はどうだ?
材料は持っているのか?
しかたないな、これを使いなさい。
貸すだけだ。
手伝ってやるから自分で集めて返してくれ」
信じくれないくらい優しい人です。
私の莫大な魔力を中和し封じながら、私の事を理解しようとしてくれました。
私の事情を丁寧に聞いてくれて、できる事とできない事を確認してくれました。
魔晶石と魔血晶の作り方は知っているものの、作るための材料を持っていないと言うと、材料まで貸してくれるというのです。
そう、タダでくれるのではなく、貸してくれるのです。
貸し借りを作らないという、貴族社会でとても大切な事を守ってくれるのです。
しかも私が経験不足と知って、一緒に材料を集めてくれるというのです。
普通の貴族なら、貸しを作っておいて搾取したり家を乗っ取りしたりします。
それを、私を教え導こうしてくれるので。
まるでリュカのようです。
油断してはいけない。
心を奪われてはいけない。
そう心を叱咤しても、どんどん魅かれていくのが自覚できます。
このままでは、この人ナシでは生きていけなくなってしまいます。
長年一人で怯え緊張して生きてきたのです。
安心してしまうと、この場に崩れ落ちて立てなくなってしまいます。
この人に縋りついて依存してしまいます。
自分自身に叱咤激励して、魅かれないように自制しました。
次々と魔晶石を創り出すことができました。
心の中で怒り狂ってモノが、この人に出会う事ができて嘘のように静まりました。
魔晶石の材料に限りがあったので、羊皮紙に魔法陣と呪文を書き込んだ巻物、魔力を持った魔獣の皮をなめした魔皮紙に、魔力を込めながら魔法陣と呪文を書き込んだ巻物をたくさん作りました。
破壊力の小さい、必要な魔力の少ない魔法は、羊や山羊や豚の皮から作られた羊皮紙でも作ることができます。
ですが破壊力が大きい、必要な魔力が多い魔法は、その魔法に応じた強力な魔獣の皮で作られた魔皮紙が必要なのです。
この人はその貴重な魔皮紙を大量に持っておられました。
そして私にその魔皮紙を貸してくれたのです。
つまりは魔獣を狩る手伝いをしてくれるというのです!
「お名前を教えてください!」
私はどうしてもこの人の事が知りたくなったのです。
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