第六十四話 初代聖女アルフレア(前半)
イカとの戦闘が終わり、俺達は現在光に包まれてフグテンの空を飛んでいた。
何故こんな事をしているかというと、初代聖女アルフレアの墓を目指しているからだ。
初代聖女アルフレアからの通話が途切れた後、俺はその事を皆に話した。
流石に突拍子もなさすぎて信じて貰えないかと思ったのだが、皆呆れるほどに俺の話を信じてしまい、初代聖女の墓を探そうという話になってしまったのだ。
アルフレアは初代だけあって、当時はまだ聖女を保護しようという動きがなかった。
彼女が魔女を倒し、そこで初めて聖女という存在が人々に認識されたのだ。
それ故にアルフレアは出身地や誕生日に至るまで、そのほとんどが謎に包まれている。
謎に包まれた初代聖女……その墓がこんな世界の裏側にあるなどと急に言われても普通は信じられないだろうし、疑っても無理のない事だ。
しかし誰も疑わず、『エルリーゼ様が声を聞いたというのなら』と信じてしまっている。
や、嘘は吐いてないんだけどね。声も本当に聞こえたんだけどね。
ただそれはそれとして、もっと疑えよと心配になってしまう。
俺が詐欺師だったら金取り放題だぞ、これ。
「プロフェータ、本当にこの方向で合っているのですか?」
「ああ、間違いない。アルフレアはこの先で眠っている」
世界のあらゆる場所を見通せる亀を連れて来てよかったと本当に思う。
こいつがいなきゃ地道な情報集めから始めなきゃならなかった。
とりあえず、到着まで少し時間があるだろうし、もう少し質問しておくか。
「何故、この国にアルフレア様の墓があるかプロフェータは知っていますか?」
「ああ、知っているよ。この国はね……アルフレアと初代魔女の故郷なのさ。
今でこそ魔女と聖女の戦いはジャルディーノ大陸が主になっているが、全てはこの小さな島国から始まった事なんだよ」
割と重大な情報だが、俺の知らない話だ。
ゲームではそんな事、一言も触れられていない。
いかんな……ここにきて、俺の持つ情報アドバンテージが無価値になりつつあるぞ。
ちなみに『初代魔女』と『
まず先に世界が、人類を管理すべき世界の代行者として初代魔女を生み出し、それが暴走した後に
なので最初にトチ狂った迷惑な魔女はアルフレアではない。
「おっ、ここだ。降りてくれ」
亀に言われ、高度を落とす。
地面に降りて周囲を見渡せば、着地した場所はどうやら岩壁に挟まれた谷のような場所らしかった。
亀はノソノソと歩き、近くにあった洞窟の中へと入っていく。
それに案内されるように俺達も続くと、少し進んだ先に幻想的な景色が広がっていた。
大理石……だろうか。天井が白い石で構成されており、それが入口から届く光と洞窟内の水とで青く照らされてこの世のものならざる景観を作り上げていた。
そしてその先に立っているのは、随分とボロボロで錆びた鎧が一つ。
鎧に中身はない……が、腐食した剣を手にしており、ギシギシと音を立てて動いている。
……つついたら崩れそうだな。
「あれは……」
「……アルフレアの騎士だ。当時はまだ聖女を守る騎士という概念そのものがなかったが、あいつは死しても尚、魂だけで現世に留まってアルフレアを守り続けている」
俺達が近付くと、鎧は俺だけを通してその後に続くレイラ達を遮るように剣で道を塞いだ。
「……どうやら、この先は聖女だけしか通さないって事らしいね」
亀が複雑そうに言い、俺とエテルナを見比べた。
ちょ、おい。そこの鎧! お前の目は節穴か!
って、どう見ても節穴だ。中身ないもんな。
それはともかく本物の聖女を通せんぼしてるぞお前。
しかし今ここでそれを言うわけにもいかず、俺は渋々先へと進んだ。
うーん、いいのかこれ? 俺偽物だぞ?
更に洞窟を進むと、やがて最奥には一つの巨大な水晶が鎮座していた。
水晶の中には女性が閉じ込められていて……ちょ、裸! 裸! HA☆DA☆KA!
イヤッフゥゥゥゥ!
年齢はレイラと同じくらいだろうか。
エテルナ同様に美しい銀色の髪をしており、肩まで伸びている。
頭の上の方で髪が左右に跳ねていて、しかもその部分だけ何故か毛先が黒に変色しているせいで何となく犬の耳のように見えた。
目鼻立ちはくっきりしていて、もはや当然のように美人。
聖女っていうのは美女美少女しかなれない決まりでもあるのかね。
で……胸のたわわなメロン! でかい!
ファラ先生以上かこれは……?
ところでどうでもいいんですが、実はわたくし培養槽フェチでして……。
漫画とかアニメとかで女の子が全裸で培養槽に閉じ込められて眠っているシーンとかあるじゃないですか。
これは培養槽ではなく水晶だが、かなり俺の好みだ。
グーよ、グー!
と、俺の性癖はどうでもいいな。
ここまで来たが、この後どうすりゃいいんだろう。
とりあえず手を触れてみれば何か変わるんだろうか。
と、触ってみると景色が一変して何故か光の中で浮遊していた。
しかも俺、服着てないやん。
何で俺までまっぱにしてんねん。誰得だよ。
とりあえず究極防御魔法の謎の光で映しちゃいけない部分はガード出来ているが、どうも落ち着かん。
こりゃあ多分、精神世界的なアレなんだろう。
よく集中してみれば、俺の身体の感覚も残っているし、身体の方の手を動かす事も出来る。
『ようこそ、今代の聖女よ。貴女が来るのをお待ちしておりました』
声が聞こえたので振り返ると、いつの間にか美人のねーちゃんが全裸で俺の前に浮いていた。
うっひょー、眼福眼福。
女の子が俺の前で無防備になるっていうの、TSして一番嬉しい部分だよな。
同性同士だからって羞恥心なく肌を見せてくれる。
なんていうか……その……下品なんですが……フフ……こりゃホンマ勃起もんやで……。
「初代聖女、アルフレア様ですか?」
とりあえず確認。
こんな所にいる時点でまあ九割間違いないのだが、一応ね。
『はい。貴女は今代の聖女エルリーゼに間違いありませんね?』
「……ええ。確かに、今代の聖女という事になっています」
『なっている……とは?』
あ、この人マジで分かってねえ。
はい確定。何か初代聖女って事で威厳っぽいの出そうとしてるけどこの時点でぽんこつ確定。
とりあえず、あんまり苛めるのも可哀想だしさっさとネタバレしてやるか。
「私は聖女ではありません。偶然聖女と同じ村で生まれて取り違えられた、魔力が強いだけの別人です」
『うぇ!?』
俺のカミングアウトにアルフレアは目を丸くして驚いた。
はい威厳崩壊。
でも、今まで頑張って威厳を保とうとしていた子があっさりメッキが剥がれて素顔を見せるのっていいよね。
俺の素は見せたら不味いからメッキも剥がさないが、中身が可愛いならむしろ素が出る事で人気も高まる。
『え、嘘……だって貴女は歴代最高の聖女で過去の誰も出来なかった事をいくつもやり遂げて……そ、それが偽物? 取り違え?
う、嘘よ……つまりそれって一般人でも頑張れば出来た事が、歴代の誰にも出来なかったって事になるわけで……むしろ私達聖女の存在意義がががが……千年に渡る歴代の聖女は一体何だったの? 私含めて全員無能だったの?
私達って歴代全員合わせて一般人未満なの? 嘘でしょ?
で、でも言われてみれば魔力はおかしいくらい強いのに、聖女の力そのものはむしろ歴代ぶっちぎり最下位でおかしいとは思ってたのよ。声も全然届かないし……たまに聖女じゃないはずのエテルナって子の方が反応しちゃうし……あれ? もしかしてあっちが聖女……?』
おーおー、パニくっとる。
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