第96話 両親公認?

「いじいじ……いじいじ……」


 町へ観光に出かけた翌日。

 の、翌日の翌日の翌日の……何日経ったんだっけ……まあどうでもいいや……。

 今日も私は、ヴェーゼ本部の端っこで“いじいじ”中……。


「ソーラ……いつまで“いじいじ”しているつもりですか?」


「……だって……いじいじ……」


「ダークマター融合のことは誰も気にしてないナ。むしろ感謝してるニャ!」


「……私は気にしてるもん……いじいじ……」


 まさかフローンの全員とダークマター融合しちゃうなんて。

 もうお嫁にいけない……外も歩けない……生きていけない……いじいじ……。


「お待たせしましたわ! あら? ソーラはまだ“いじいじ”していますのね」


「ずっと“いじいじ”して、カビっぽくなっているのです」


「カビソーラだニャ……」


 カビてないもん……。

 引きこもってるだけだもん……。


「えぇと……それはそうと! 今日はワタクシの両親を連れてまいりましたわ」


 ん? エルリンのご両親?


「どうも、エルリンの父のエルドルと申します」


「母のミユリンです、エルリンがお世話になっています」


 へぇ……この二人がエルリンのお父さんとお母さんなんだ。

 二人ともエルリンに似て、黄色くて金色でスラッとしてるね。

 特にお母さんはエルリンそっくり。なんだか名前もカワイイな……。


「あら、あなたがソーラちゃんね?」


「そうだよ……」


「娘のこと、それとフローンのこと、本当に感謝している」


「でも……お父さんとお母さんも、私のことをヘンタイだと思ってるんでしょ……」


 きっとそうだよ……。

 二人とも、私とダークマター融合してたはずだからね……。


「ハッハッハッ、まさか!」


「そんなことないわよソーラちゃん、むしろ喜んでいるのよ?」


「……喜んでる?」


「ああ、実はだな……」


 おや?

 二人して改まった態度で、どうしたんだろう? 


「エルリンを嫁にもらってくれないか?」


「うん……うんっ!?」


「ちょっとお父様!? 何を言いだしますの!」


 え? 何? よめ!?

 よめって……読め? 夜目? それとも嫁?


「我が家では、エルリンとはじめてダークマター融合をした相手に、エルリンを嫁がせようと決めていたのよ」


「ソーラさんは女性で、エルリンも女の子だ。しかしどうやらソーラさんは、エルリンのことを非常に好いてくれているらしい」


「ダークマター融合でソーラちゃんのことを知れてよかったわ。こんなにステキなお嫁さん、いや旦那さんかしら? 嫁旦那さんかしらね! とにかく、こんなにステキな相手は他にないわ」


「勝手に決めないでくださいですの! どこがステキなのです!?」


 ちょっとエルリン!?

 勢いで言っちゃったのかもしれないけど、その発言はもの凄くショックだよ!


「とんかくソーラさん」


「「エルリンを幸せにしてやってください」」


 二人ともダークマター融合を通じて、そんな風に思ってくれたんだね。

 最悪だと思ってたけど、悪いことばっかりじゃなかったよ。


「お父さん、お母さん……」


 いや、違う。

 もうお父さんとお母さんじゃないよね。


「お義父さん、お義母さん。必ずエルリンを幸せにします」


「おぉ! ありがとうソーラさん!!」


「これでソーラちゃんも、私達の娘ね!」


 ついに私にも、守るものが出来たなぁ……。

 なんだか感慨深いよ。


「エルリン、一生大事にするからね!」


「このっ、正気に戻りなさぁーいっ!!」


 痛いっ!?

 だからエルリン、ビンタは止めてってば。


「何をしてるんだかニャ~……」


「そうですねぇ~……」

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