第85話 無敵の四人

「攻撃、開始します」


 考えてる場合じゃない!

 とにかく防御しなくちゃ!!


「全方位ビーム、斉射開始」


「ダークマター! バリアー!!」


 くうぅっ……ビームの雨だ。

 雨っていうか、ビームの台風みたいになってる。

 この力、スプリィム以上だよ。


「ワシも力を貸そう! お嬢ちゃんは少し休んでおれ!!」


「力を貸すって……おじいちゃんは大丈夫なの?」


「任せておけぃ! ぬおぉっ! ワシの本気を見せてやろう!!」


 おぉっ、おじいちゃん凄い!

 強力なバリアーでビームを防いでる!!


「ぐぬおぉっ!? これはっ……老体にはキツイのう……」


 無理して頑張ってくれて……おじいちゃん、ありがとう。

 今のうちに私は休んで、調子を取り戻さなくちゃ。

 だけど……。


「自分と戦うなんて……やっぱり出来ないよ……」


 相手は私なんだよ……。

 このまま戦ったら……自分を攻撃して……死なせちゃったりするかも……。

 そう考えたら、怖くて攻撃なんて出来ない……。


「うぅ……お父様……お母様……」


「エルリン……」


 エルリンはずっと塞ぎ込んで泣いちゃってる。

 助けてあげたいけど、まずは今の状況をなんとかしなくちゃ。

 だけどその為には、自分の体と戦わなくちゃいけなくて……。


 ダメだ、どうしたらいいか全然分かんないよ。

 私達、ここまでなの……?


「う……う~ん……」


「うナァ……」


 えっ? 今の声は!


「うニャ~?」


「あれ……ここは? 確かスプリィムと……?」


「「チコタン! ミィシャン!!」」


 二人とも目覚めたんだね!

 体はボロボロだけど、とりあえず意識が戻ってよかったよ。


「二人とも体は大丈夫……?」


「心配しましたわ……」


「「……」」


 ……あれ? 

 チコタンもミィシャンも、どうして黙ってるんだろう?

 もしかして、喋れないくらい体が痛いの!?


「ソーラ、エルリン……何かあったのですか?」


「「え?」」


「二人とも、ボク達より酷いことになってるニャ」


「酷いこと……ですの?」


「はい、今にも死んでしまいそうな顔をしています」


「ソーラもエルリンも、人の心配をしてる場合じゃないナ」


 エルリン……確かに酷い顔色だ。目はうつろで生気がない。

 心が落ち込んでいるから、顔色にも表れてるんだね。

 そして、きっと私も同じ顔をしてるんだと思う。


「ミィシャン、起きられますか?」


「もちろんナ……あ痛たタッ」


「ちょっと! 無理して動いてはダメですわよ!!」


「いいえ! 無理をしているのはソーラとエルリンです!」


「事情は分からないけド……友達が辛い思いをしてるニャ……ゆっくり寝てられないヨ!!」


 あぁ……私……何やってるんだろう……。

 ボロボロの二人に心配をかけちゃって……。

 エルリンのことも助けられてない……。


「痛いなんて言ってられません!」


「ソーラとエルリンは休んでるニャ! スプリィムはボク達でやっつけるミャ!」


「「二人とも待って!」」


「あっ、ソーラ……」


「エルリン……ふふっ、揃っちゃったね」


 伝わってくる。

 チコタンの思い、ミィシャンの思い、エルリンの思い。

 温かくて、とっても強い思いだ!!


「戦えないなんて、そんなこと言ってる場合じゃなかったよ!」


「ワタクシも、友達が頑張ってくれてるのに、落ち込んでる場合ではありませんでしたわ!」


「エルリン、私達も戦おう!」


「もちろんですわ、一緒に戦いましょう!」


 何があっても、どんな時でも一緒に戦うの!

 私達は友達でチームなんだから!!


「チコタン、ミィシャン! 心配かけてゴメン!!」


「ワタクシも心配をかけましたわ、もう大丈夫ですの!」


「いえ、私達も心配をかけましたね」


「ニハハッ、心配をかけたのはみんな同じだったニャ!」


「フフッ、そうですわね」


 すっかり気持ちも軽くなった。

 やっぱり友達の力って凄い、四人そろえば無敵だ。


「よし、みんなで戦おう!」


 見せてやる! 私達の力を!!

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