第58話 お姫ちゃんの正体

「う……うぅん……」


「あ、起きた?」


「ここは……どこですの?」


 おはようお姫ちゃん、外はすっかり夜だよ。

 半日くらい眠ってたかな、よっぽど疲れてたんだね。


「倒れる前のこと、覚えてる?」


「えぇ……確かヴェーゼに襲われて……?」


 どうやら記憶が曖昧みたい。

 倒れる直前はフラフラだったもんね、記憶が飛んじゃっても仕方ないか。


「ご飯を用意しましたよ~……あ、目が覚めたのですね!」


「気分はどうかナ?」


 おや、チコタンとミィシャンが戻ってきた。

 二人にお願いしてた夕食、ナイスタイミングで完成したみたい。


「気分は悪くありませんわ……それよりここは? あなた達は一体?」


 あらら、私達のことも覚えてないんだね。

 場所はあんまり言いたくないんだけどな……。


「ここはイチャイチャホテルですよ」


「イチャイチャ……イチャイチャホテル!?」


 チコタンに言われちゃったよ……。

 そう、ここはイチャイチャホテル。

 地球でいうところのラブゥなホテルだね。


 四人で休める場所を探した結果、ここしか見つからなかったんだよ。

 変な目的で入ったわけじゃないんだよ。

 嘘じゃないんだよ。

 ホントだよ。


「安心して、ちょっと休むために入っただけだからね」


「ええ、女性同士ですから変な心配はしていませんが……」


 そうそう、変なことなんて絶対にしないんだから。

 ん? チコタンとミィシャンがじっとり私を見つめてる……一体どうしたのかな?

 何か疑われているような……まあ気にしないでおこう。


「それじゃあ改めて自己紹介をしておくね、私はソーラ」


「チコタンです」


「ミィシャンだヨ」


「ソーラにチコタン、ミィシャンですね。ワタクシはエルリンと申しますわ」


 エルリン!

 ステキな名前だ、ちょっと上品な感じもする。

 お姫様っぽい見た目にピッタリな、カワイイ名前だね!


「エルリンも食事にしますか? もう少し休みますか?」


「美味しいご飯だヨ」


 おぉ! 凄くいい匂いがする。

 この料理は……水色とピンクの冷やしグラタンかな?

 宇宙的すぎてよく分かんないけど……なんでもいいや。

 とりあえずお腹が空いちゃったよ、先に食べちゃおう。


「モグモグ……んっ、美味しい! エルリンも食べなよ?」


「いえ、ワタクシは結構です……それよりヴェーゼの連中はどうなりましたの?」


「ああ、ゴミ溜りには帰ってもらったよ」


「帰ってもらった!?」


「うん、モグモグ……二度と弱い者いじめをしないように命令して、その辺に放り出した……モグモグ……」


 あ、ついでにエルリンに関する記憶も全部消しちゃった。

 これでエルリンが追われる心配はなくなるよね。


「完全に操られていましたよね……」


「ワンちゃんだったナ……」


「そんなことが出来るなんて、信じられませんわ……」


 モグモグ……モグモグ……モグモグモグッ!


「ふぅっ、美味しかった! さて、エルリンに聞きたいことがあるんだけど」


「ソーラ、食べるの早すぎるミャ……」


「こんな状況なのに、よく食べられますね……」


 うっぷ、何やら呆れられている気がする。

 気のせいかな、気のせいだよね。


「とりあえず事情を聞かせてもらいたいな、追われてた理由とか」


「それは……あなた達をワタクシの事情に巻き込んでしまうかもしれませんわ……」


「大丈夫だよ、こっちも普通じゃない事情があるからね」


「普通じゃない事情? よく分かりませんが……事情を知って後悔しても責任は取れませんわよ?」


 後悔なんてしないよ、何しろこっちは元地球人の特異点なんだから。

 私以上にヘンテコな事情の人なんて、そうそういないよね。


「実はワタクシ、ユニオンマスターの孫ですの」


 なるほど、孫ね……って。


「「「孫!?」」」

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