第45話 体の在り処

 晴れ渡る空、澄んだ空気。

 朝の日差しを浴びて、キラキラと輝くヴェーゼ本部タワー。


 お祭りから一夜明けて、今朝は早くからヴェーゼ本部に呼び出された。

 まあ呼び出しは別に構わないだけど……そんなことより……。


「あ、頭が痛い……」


「うナァ……地獄だミャ……」


 とにかく朝から頭が痛い。

 どうやらミィシャンも頭痛が酷いみたいだね。

 昨日の記憶もあいまいだし、これは一体なんなの?


「二人とも大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃないぃ……頭痛が痛いぃ……」


「うぅ……ミャウゥ……」


「きっと二日酔いですね。昨日のお祭りで二人とも浴びるようにラハルサワーを飲んでいましたから」


 ラハルサワー? 何それ初耳なんだけど。

 サワーってお酒のことだよね、そんなの未成年が飲んじゃダメなんじゃない?

 まあ今は宇宙人の体だし、地球の法律なんて無視していいとは思うけどさ。

 あぁ……そんなことより頭が痛い……。


「おはようございますソーラさん、お待ちしておりました……ずいぶん調子が悪そうですね?」


「おはようマヤマヤ、ちょっと頭が痛くてね……」


「昨日はずいぶん飲んでいましたものね、大変でしたよ……」


 ん? 大変?

 なんのことだろう?


「ええ、特にソーラが大変でしたね。酔っぱらって女の子を追いかけ回したり、ミィシャンとマヤマヤのおっぱいを交互に揉んだりと……」


 えぇっ!? ミィシャンとマヤマヤのおっぱいを交互に揉む?

 私のバカ! どうしてそんな素敵な記憶を忘れちゃってるの!!


「ソーラさんはその……変態だったのですね……」


 違う! それは絶対に違う!!

 誤解しないでマヤマヤ。私は人よりちょっとだけ、カワイイものが大好きなだけだから。

 マズい、マヤマヤの視線が冷たい。どうしよう……。


「おお! 特異点様!!」


 マジーメ! ナイスタイミング!!


「マジーメおはよう!」


「おはようございます特異点様! 私などに挨拶をくださるとは、感激でございます!! チコタン様とミィシャン様もよくいらっしゃいました! さあ、中へお入りくださいませ!!」


 ふぅ、マジーメの登場でごまかせた……かな? 危うく変態扱いされるところだったよ。

 これ以上マヤマヤから冷たい目で見られる前に、早く本部に入っちゃおう。


「「「「「ようこそ! いらっしゃいませぇ!!」」」」」


「うギャ! 何事ナ!?」


「ひゃわっ!? なんですか?」


 ビックリした。本部に入った瞬間、一糸乱れぬ敬礼と挨拶。

 足元にはレッドカーペットまで敷いてある。


「これは……?」


「ヴェーゼの従業員が一丸となり、特異点様を歓迎しているのでございます! 私が指揮を執り、一晩でここまで仕上げたのですよ!!」


「そ、そうなんだ……」


「さあ、話は移動しながらにしましょう」


 マジーメ、一晩でここまで仕上げたって言ってたね。

 頑張りすぎてちょっとキモイよ……。


「ようこそお越しくださいましたぁ!」


「ごゆっくりされてくださいませぇ!」


「うナァ……居心地が悪いニャ……」


「そうですね……ちょっと怖いですね……」


 確かにちょっと恐怖を感じる、もはや宗教だよ……。

 よし、歓迎のことは一旦忘れよう、考えだすと不気味に思えてきちゃうし。


「ところでマジーメ、今日はなんの用事?」


「はい、特異点様のお体の場所についてです」


「体の場所……?」


 あ……。


 あぁっ……。


「ああぁっ! 忘れてた!!」


 そうだよ! そもそも私の体を取り戻すためにラハルまで来たんだった!!

 色々あってすっかり忘れちゃってたよ。


「ソーラ……ホントに忘れていたのですか……?」


「普通そんな大事なこと忘れないヨ……」


 いやいや、ちょっと頭の片隅に追いやってただけ。

 そのうち思い出してたはずだから!

 うぅ……チコタンとミィシャンの視線が冷たい。

 とりあえずマジーメに話しかけてごまかそう。


「えっと……それで、私の体はどこにあるのかな?」


「特異点様のお体は……真のヴェーゼ本部にあります」


 そっか……真のヴェーゼ本部ね……って。


「真のヴェーゼ本部!?」

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