第42話 温かい光

 酷い……酷すぎる……。


「子供達、しっかりしてください!」


「ぁ……ママ……パパ……?」


 薄暗い部屋に沢山の子供が倒れてる。

 衰弱してて、嘘みたいにやせ細ってて。

 目は虚ろで顔色は凄く悪い、息もほとんど出来てないみたい。

 子供達はずっとこんな扱いをされてたの? あんまりだよ……。


「なんということだ! 生まれ変わる前の私は、こんなにも酷い行いをしていたのか……」


「今はそんなことを言っている場合ではありません、早く子供達を病院に! 地上まで運ぶので、あなたも手伝ってください」


「ええっ、もちろんです!」


「チコタン、ボク達も手伝おウ!」


「はい!」


 十……二十……三十……もっと多い。

 この人数を地上まで運んで、それから病院に連れていく?

 そんなことをしてる間に、子供達はどんどん弱っちゃうよ。


「マヤマヤ、ちょっと待って」


「ソーラさん?」


「少しだけ時間をちょうだい、少しでいいから」


 予想以上に子供達の状態が悪くて、一刻の猶予もないように見える。

 だからこそしっかり考えなくちゃ。

 焦って動いても全員の命を助けられないかもしれない。

 どうすれば皆を助けられるのか、落ち着いてしっかり考えるの。


 ……。


 ……よし、決めた!


「皆ちょっと離れててね……」


 ダークマター、集まって。

 子供達を助けるために力を貸して。


「この光は……ソーラさんですか?」


「ダークマターだニャ! 眩しいニャ!!」


「こんなに高密度のダークマターは見たことがありません。ソーラ、無理をしないでください」


 ありがとうチコタン、心配してくれて嬉しいよ。

 チコタンの言う通り、こんなに大量のダークマターを操るなんて無理なことかもしれない。

 けど今はそんなこと関係ない。

 必ず子供達を助ける。その為に出来ることがあるなら、無理なことでもやってみせる。

 お願いダークマター、この子達に未来をあげたいの!!


「あ……光……綺麗……」


 この光が皆を元気にしてくれるよ。

 だからもう少しだけ頑張ってね。


「……温かい……」


「ソーラさん、子供達が……子供達が!」


「顔色がよくなってる、呼吸も安定してきたナ」


「あれ……? 僕たち……」


「ソーラ! 子供達が意識を取り戻しました、もう大丈夫そうです!!」


「はぁ……よかった……はぁ……まだ万全じゃないと思うから……ゆっく……り……」


「「ソーラ!!」」


「ふぅ……大……丈夫……」


 危ない、意識が飛びかけた……。

 何十人もいっぺんに回復させたからね、ダークマターの使い過ぎだ。

 流石にちょっとフラフラする。


「ソーラさん、ありがとうございます! ソーラさんがいなければ……」


「それより……早く子供達のところに……いってあげて……」


「分かりました!」


 もう危なそうな子供は見当たらない。

 あとはマヤマヤ達に任せておけば大丈夫だね。


「大丈夫ですか? 私の声が聞こえますか?」


「……うん……助けにきてくれたの……?」


「そうですよ、一緒にママやパパのところに帰りましょうね」


「……うん……っ」


 ふふっ、嬉しそうな笑顔。

 やっぱり子供は宝物だ。


「ソーラ、起き上がれますか?」


「……どうだろう……分かんない……」


「大丈夫、ボクとチコタンで支えるヨ」


 二人ともありがとう、なんだか今日は助けられてばっかりだ。

 子供達も助けることが出来た、いよいよ作戦も終わりだね。


 さあ、皆で地上に帰ろう!

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