第37話 チコタンの作戦

「チコタン、右側をお願イ!」


「はいっ……!」


「フハハハッ! 無駄だ無駄だぁ!!」


 くぅっ、さっきから防戦一方だ。


「二人ともバリアーから出ないでね!」


 周りを飛び回ってる、えっと……ドローンなんとか……プチUFOが凄く邪魔!

 雨のようにビームが降ってきて全然前に進めない。バリアーを張って守るだけで精いっぱいだよ。


 ホントはワープとか出来れば楽勝なんだろうけど、銀ピカスーツの影響でダークマターが上手く使えない。


「ハッハッハッ、そろそろ諦めたらどうだ? ビームの出力は下げてある、直撃しても全身がマヒするだけで死ぬことはない。さっさとビームの餌食になるのが利口だぞ?」


「うナァ……このままだとジリ貧だニャ……」


 ミィシャンの言う通り、今のままじゃ勝つのは難しいかも。


「いつまでも守ってばかりはいられないし、一度退却した方がいいかな?」


「ちょっと待ってください!」


 うん? チコタン、急にどうしたんだろう。


「ミィシャン、この銃のマルチロックは何ヶ所まで可能ですか?」


「うナ? 最大で二十はいけるニャ。でも最大数を狙うなら至近距離まで近づく必要があるヨ」


「分かりました、十分です……」


 突然じっと考え込んで、ホントにどうしちゃったの?


「私に一つ考えがあります」


「考え?」


「はい。ゲスーチの着ているジャマースーツ、あれは各部のジャマー装置でダークマターの動きを阻害していると言っていました。ということは、ジャマー装置を破壊すればダークマターが正常に使えるはずです」


「まあ、それはそうだけどさ……」


 言ってることは分かるけど、そんなに簡単な話じゃないよ……。


「チコタンは作戦を思いついたニャ? だったら教えてほしいナ」


「はい、狙いはジャマーの弱体化です。ジャマースーツを見ていると、時々光る部分があります、そこが恐らくジャマーだと思われます」


「よく見てるニャ、それデ?」


「見える範囲で十八ヶ所です。そこを破壊すればジャマー効果が弱まるはずです。そこでミィシャンの作ってくれた銃です、マルチロックを使って一撃で全て破壊します」


「うヌヌ……分かりやすいけど難易度は高いナ。向こうにもバリアーがあるから、その内側ギリギリまで近づかないといけなイ。でもビームが飛んでくるから、バリアーから出られないしニャ……」


「ビームが飛んでくるからバリアーから出られない……本当ですか?」


 なるほど……嫌な予感しかしない……。

 そしてこの予感はきっと当たってる。


「そういうことかニャ! 分かった、何でもやるヨ!」


「待って、それはダメ」


 止めなくちゃ、チコタンの作戦を進めるわけにはいかない。


「二人とも私のバリアーから出るつもりでしょ? 無理やりゴミクズに近付いて攻撃するつもりだよね? ダメだよ、危険だよ!」


「大丈夫ですよ。ビームの出力は下げていると言っていましたから、直撃しても死ぬことはありません。ね、簡単でしょう?」


「確かに簡単な話だミャ! 突撃すればいいだけだナ!」


「そういうことを言ってるんじゃないの! 二人が危険な目にあうのが嫌なの!」


 信じられない、二人とも捨て身で突撃する!?

 こんなに沢山のビームが飛んできてる、この中に飛び出していく?

 きっと無事じゃ済まない、怪我をしちゃうかもしれない。

 そんな作戦は絶対にダメだよ。


「危険な目にあうのは私も嫌です……」


「だったら──」


「でも私だって戦いたいのです! 守って貰ってばかりじゃなく、私もソーラのことを守りたいのです、ソーラの為に戦いたいのです!」


「チコタンの言う通り、ボク達は友達でチームなんだから、助け合って当然ニャ」


「危険がなんだと言うのですか、友達の為に頑張るなんて当たり前のことでしょう?」


「その通りだナ!」


「二人とも……」


 ……そっか。

 危険な目にあってほしくない、それは私の勝手な思いだよね。

 二人は私の為に頑張りたいって思ってくれてる、私が二人の為に頑張りたいのと同じだ。

 だったら私は二人のことを信じよう、それが危険な作戦だったとしても。


「分かったよ……二人に任せる!」


「「ソーラ!」」


 どんなピンチも三人で乗り越えるべきだよね。

 だって私達は友達でチームなんだから!


「怪我してもダークマターで治してあげるから、思いっきりやっちゃって!!」


「はい、任せてください!」


「やってやるニャ!」


 頑張って、チコタン、ミィシャン!

 信じてるから!!

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