第四六七回 進撃すると、まるで青い山脈。


 ――迎える金曜日。休みたいと思っても登校する。決戦の金曜日と化しそうだから。



 それは明日を、心残りのない週末を迎えるために。今日の一日を乗り切るのだ。そして今日も、僕と一緒に登校してくれる仲間がいる。とても心強い存在だ。


 ……だから、頑張れた。


 でも、これからは其々の道。可奈は一足先に、我が道を歩む。これからも同じ学園だけれども、其々の道……それは、僕の身にも降りかかる。或いは来たる時期……


 僕は、星野ほしの千佳ちかという固有名詞を持つ人間。

 僕以外に僕という人間はいなくて、僕という個性は、僕以外にはいない……


 物思う雨の風景。少し濡れながら、雨の香りを感じながら、今久しくの放課後の活動。


 芸術棟へと足を向ける。

 心のしんどさは誤魔化せないけど、まだ頑張れそうだから。


 すると――


「あっ、ごめん」


 と、僕は思わず声にした。外の世界と一体化しそうな、葉月はづきちゃんの姿……書き始めのキャンバスに向かって没頭していた。令子先生と同じ絵を描く時のスタイルで、全裸で僕を見て、ニッコリと、笑顔で「あっ、千佳先輩、いつものことですから」と言って、迎えてくれた。さらに「これはね、僕のスタイルですから、もう慣れっ子ですよね?」とも付け加えて、それがもう、葉月ちゃんにとって普通のことのように思わせるのだ。


「あっ、そうだったね」


「千佳先輩は、何か僕に用があるような、そんな顔をしてますね」


 とまで……


 僕の脳内でまだ、整理されてないことまでお見通しで。……実は脳の奥では、僕もまた可奈かなと同じように、芸術部を辞めるという思いが芽生えていた。その思いがハッキリするのには、もう少しの出来事が必要なのだと思う。僕は、これから先を見据えそうな……



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る