第四三五回 聳え立つの! 男の子の節句に。


 ――それは、五連休の最終日に向けて飾られる。今はまだ、その準備とも思われる。



 五月五日の鯉のぼりの日に。


 僕らはまだ子供。十代の真ん中よりも、まだ一つ前。……僕も太郎たろう君も、そして梨花りかもまだ十四歳。でも可奈かなは……一足先に十五歳になった。四月二十九日が誕生日だから。


 そこから、実感したの……

 中学の最終学年の自覚……


 だからね、リュックの中にはお勉強の道具も入っていて、


千佳ちかお姉ちゃん・・・・・が、お勉強見てあげるわよ」


 との台詞に至った。それは勿論、太郎君の前で。すると、やっぱり……と言うのか、まあ、わかってはいたけれど、笑われたの。それは、このような台詞で。


「見るも何もって、開始から三分後に寝ちゃって、起こされたの誰だっけ? それに男と女。つまり俺と千佳だけなのに無防備だぞ。千佳だって女なんだからさ……」


「わかってない」


「何が?」


「僕は太郎君にお勉強教えるために、前もって予習復習してるの。……まあ、確かに寝ちゃったけど。でもそれは、太郎君だからなの。太郎君だから安心してるの」


「俺だって男。千佳が目の前に転がってたらな、……男としてだな」


 と言いながらも、少し俯く太郎君。

 目を逸らし顔も逸らす。ちょっと背伸びしているのが見え見えで。


「いいよ。太郎君なら」


「えっ?」と、太郎君は顔を上げる。目と目が合うの……


「もう僕の全部見ちゃってて、もう僕たち結ばれた仲なんだから。『未来の子供のためにも課外授業』……やっちゃおうと思って、こうして来てるんだよ」


 ――それはね、聳え立つ鯉のぼりを一緒にね。屋根より高く高くね。



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