第四〇八回 頑固な子ほど、可愛いの。


 ――あなたの第二ボタン、僕が貰いますから。



 正門の前で、そう宣告を受けた。僕というのだから、一人称が『僕』……当たり前のことのように思うけれど、当たり前ではなくて『僕』というだけに年下の男の子というイメージで、どうしても、都築つづき玲央れお君と思いがちだけど、……実は、女の子からだったの。



 その女の子も、僕や梨花と同じく『ボクッ娘』

 やっぱり星野ほしの系統の女の子って、『ボクッ娘』に統一されているのだろうか?


 一瞬そんな思いも過るが、今はこの子のことだ。それは朝の御挨拶から始まって、最後は涙目になりながらも、キッチリと噛まずに御挨拶に至った。……以前からそうだたのだけれど、決めたことは一歩も譲らない子だった。とても頑固な子。……あっ、いや、以前の事情を知っているから、余計にそう思えるの。



 初めて会った頃は、車椅子で……でも、今はもうそのイメージは薄れ、どうみても普通の子と変わりないように思える。丸くて大きな眼鏡が特徴の、色白な顔。でも、もう病気だった頃の面影はなく、お下げも手伝って、とても真面目っ子な感じの子になった。


 両脚で、

 しっかりと両方の足で大地を踏んで立っている姿……この度のエピソードのサブタイトルを『葉月はづき、大地に立つ』と、そうしたいと思えるほどの雄姿。そのように見えた。


 桜舞う、舞い散る季節の始まり、

 その爽やかな風景にはピッタリの、星野葉月ちゃん。


 十三歳の中等部二年生の女の子だ。クラスは……クラスは、な何と、瑞希みずき先生が担任のクラス。それにそれにそれに――都築玲央君と同じクラスだ。我が芸術部の未来の面々は此処に集う。あくまで少し未来のことだけれど、そうエピソードに飾りたい言葉だ。


 そして僕は、十四歳の中等部三年生。先輩になった実感が、今頃になって沸々と。



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