第五十五章 春夏秋冬――二年目のスタート。

第三六六回 これは、まだプロローグだった。


 ……ウメチカ・ファイブ。残り三人の紹介を待てずに、事件が起きてしまった。


 それもまだ準備途上で……

 準備不足もいいところで、都築つづき君には申し訳なく、本当に……



 くどいようだけれど、いじめは存在しないと確信していた僕らの学園。私立大和やまと中学・高等学園。……でも、存在していた。脳内で、確信が音を立てて崩れる様が見える。


 特別な学園と、僕の中で咲き誇っていただけに。


 ……悲しいけれど、そうだね。

 しっかりしなきゃ。――都築君は、もっと辛いのだから。



「……これは?」


 一本から始まる連なる糸。糸は走るの光の速さで。――つまり起動した。僕のPC。白色のデスクトップ型の方を。画面は大きい。糸は、ネットの喩えなの。そして見せる。


 見せてあげる。


 僕の歩み。――それはエッセイ。ウェブ小説サイトの『書くと読む』の世界を。そして僕の『ウメチカの世界』を。教えてあげたの。僕が『ウメチカ』を執筆している『ウメチカ』ということを。……いつでも会えるということを。



「――逃げてもいいんだよ。だから、

 僕みたいに、手首切っちゃダメだよ。命かけちゃダメなんだから。……でも、学校を避けられないのなら、芸術棟に来たらいいよ。僕たちは芸術部で、そして生徒会直属の『ウメチカ・ファイブ』なんだから。もう辛くないんだよ。君一人じゃないからね」


 ギュッと抱き留める。胸の中で泣く都築君。


 僕も、少しもらい泣きだけれど、やっと僕にも何かできたと思えた。辛いことに男の子も女の子も関係ないない。……堪えなくていいんだよ、その涙。



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