第三六三回 この時期に起きること。(巡り合わせたその場面)
……この日、僕は早退した。
その理由を求められるとね、ちょっと言いにくいの。
授業はつまらない? ううん。
あっ、……それ以前にお勉強は好き? 特別好きじゃないかも? でも、パパとお母さんが一生懸命に、不自由なく、僕らを学校に行かしてくれているのだから、もう不登校にはならないよ。……でも、今日は特別、辛いの。……涙が出ちゃうくらい。
風は、午前の風。
涙も、宙を舞う。
誰かと喧嘩した? 嫌なことあった? まさか、いじめられて……
それは、それはね、――あれれ、君? うちの学園の子だね? どうしたの?
そう、うちの学園、私立
目の行き届く名札には名字が、名前は……教えてくれたの、彼自身が。綻びの見える制服。綺麗な顔立ち……女の子の僕から見ても。でも、赤く腫れた頬。だからね、
「お家は何処? ……あっ、親の人には内緒かな?
じゃ、じゃあ、いい時間になるまで僕のお家に来る? 帰り送ってあげるから、パパに頼んで。パパね、在宅勤務だから、君に合わせてあげられると思うんだけど……ねっ?」
それでも怜央君、何か怪訝した顔っていうのか……
不思議そうとも。……そんな解釈もできはするけれど、何か、ドン引きっていうか、
「やっぱ変だよね? ごめんね、僕たち初めて会うのに、こんなのって……」
「あの……気に障ったなら謝りますけど、女の子ですよね? 女の子なのに『僕』? いいんですよ、いいんですけど、お名前……まだ聞いてませんし、二年生ですね」
――嗚呼、チグハグな会話。
月一の女の子の痛みだから、それもあるけれど色々と失敗。やらかしたようだ。
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