第三五〇回 君も今日から、僕らのお仲間だ。


 ――とある懐メロの歌詞。あの日、生まれて初めてレコードというものを見た。



 そして聴いた。そこから流れる曲。

 お祖母ちゃんと一緒に、お母さんも一緒に、お炬燵こたで聴いたその歌を。


 僕が生まれる遥かに前、お母さんの世代よりも少し前……もしかしたら、旧一もとかずおじちゃんの世代かも。憧れの物語のような、イメージは青春あおはる奏でる色はブルー。


 それは、風に乗って羽搏はばたくブルー。

 或いは、波に乗って流れるブルー。何れも……青春奏でる色はブルー。


 それは、遠いものと思っていたの。


 でもね、僕は手に入れた。この手でしっかりと。もう目の当たりなの。


 皆が集うお部屋、梨花りかの……ううん、もう僕らのお部屋。

 梨花と僕のお部屋は密着なほど、隣接している。今この時に『ウメチカ・ファイブ!』と、名乗りを高らかと上げるほど、この場に集まりている。


 描かれるエッセイとともに、物語もまた動いている。僕は太郎たろう君に問う。……出会う前は『あの派手派手女』と罵っていた可奈かなが、今はもう打ち解けて、すっかり良い味を奏でている日々野ひびのせつこと、せっちゃんについてだけれど……


「どーゆー関係? 太郎君と」


「それはさっきも言っただろ、日々野さんとは生徒会の関係で……」


「そうじゃない! 僕の訊きたいことは。

 太郎君、何か僕に隠してることない? 例えばウ~ンとね、ほら、Xマスイブ。僕が不良っぽい男子に絡まれたことあったじゃない。僕が太郎君の恋人と知ったら、逃げちゃったでしょ。……きっとね、太郎君が何かしてないと、そんなことってないじゃない」


「じゃあ、千佳ちかはどう思う? 俺が何者かって?」


 えっ? ――予想もしなかった展開。そう訊かれるとは思わなかった。



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