第三四六回 イメージ重ねて、心も。


 ――駆ける車は次々と、悉くもテンポよく店舗を訪れる。アイテム入手も兼ねて。



 訪ねる店舗もあと二つと迫る。そんな最中、お昼迫るの。その音を奏でる。


「あーもうそんな時間ね。千佳ちかの体内時計はホント正確ね」


 と、可奈かなは言う。フォローも何も、あるがままに。……で、太郎たろう君は、太郎君はね、堪えているの笑いを。それでもってカーッと瞬間湯沸かし器みたいに熱くなるの、僕の顔。



「千佳、何処で食す? それともコンビニで何か買うか?」


「うん、コンビニ。……ティムさん、今日はありがとうね」


 と、さりげなく感謝の言葉を告げる。実は、僕からティムさんを誘った。梨花りかが残したスタンプラリーの専用ノートを活用しながら。ティムさんがパパの時にできなかったことを、お友達となった今果たすの。バンプラ買ってほしいから……って、


「あれれ? 千佳って、バンプラ好きだったっけ?」


「太郎君と作りたいなあ……って思ったの。何だか面白そうだし」


 微妙に噛み合う会話。この場合は「色々教えてね」って可愛く迫った方が良かったのかな? って思っていると、可奈が耳元で……


「この色女。浸ろうとしてるでしょ、梨花のように」


 と囁くような声のトーンだけれど、刺さるお言葉。美しき薔薇の棘のように。


「まっ、ともあれ、腹は減っては戦ができぬ……だね。

 特に今日は、あのバカと派手派手女ととっちめなきゃならないし。あなたたちも付き合いなさいよね、コンビニとケチ臭いこと言わずに、牛丼メガ盛りドカ食いするわよ」


 と、可奈は腕を組んで、ドヤ顔までした。


「よし、心得た!」


 と、ティムさん。……いつもと不陰気が違って、超ノリノリのようなのだけれど。


 そして僕は思う。――う~ん、この先どうなるのだろう? と、素朴にも。



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