第三二八回 はつゆめ!


 ――それは一富士二鷹三茄子の、あの初夢のことを指している。


 元旦の夜から、

 一月の二日にかけての、夢の中での出来事……



 楽しかったこと、何もかも。お祖母ちゃんも弾む笑顔で喜んでくれた。人生ゲームはリアルな人生と重なって、楽しい一年の計を飾った。明るくもっと革命的な幸せへの、


 ――予感を忍ばせて、そのスタートを切る。


 今宵も二人は一緒だ。手を繋いで床に就く。


 夜は……きっと長い。一年前まではね、梨花りかと、このようなこと……今日のような日を迎えるなんて、夢にも思っていなかったの。僕とソックリな女の子と……その、一緒に。


千佳ちか、今幸せ?」


「えっ?」……唐突に訊くの、梨花が。反応に戸惑うの。


「夢みたい? 僕もね、夢みたいなんだよ」


 と、梨花が言う。顔も……顔も近くて、すぐそばまで。


 ――近づく距離。僕らの関係は、加害者と被害者を越え、知人を越えて、お友達も超えて姉妹へと。今は最も近い距離に。すると梨花は、何と、僕に唇を重ねた。


「梨花、チューした」


「初夢見る準備だよ。千佳と、いい夢見たいから」


 顔が火照る。俯きながらも、


「夢じゃなくてリアル……」と、僕は言う。


「そうだよね、リアルにしたいよね、千佳」と、梨花は微笑んだ。


 だから僕らは今日も……エッセイを綴る。身近な人を元気にしたいから。そして読んでくれる人も、僕と一緒に元気にしてあげたいから。……それはね、あの日に思ったこと。


 ――僕がクシャクシャに、泣いた日に思ったことだから。


「きっといい初夢見られるよ、千佳」と寝る前に、梨花は一言、そう心に残した。



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