第三二五回 ……そして二十五日、Xマスの朝。


 カーテンから光が零れている。

 黄色のカーテンから光が……。ぼんやりとした白い光が、豆電球と馴染んでいる。


 それは、とても優しい色……


 冷たくも、

 ほんのり温かい。


 僕も、もうすぐ馴染むと思う。新しいこのお部屋と……いるはずだったと思われるティムさんのいない、このお家……。ちょっと涙が滲んで寂しくなるけれど、時々思う。


 ――ティムさんのこと、もう「パパ」と呼べない寂しさ。


 僕はティムさんがパパだった頃に、ティムさんの寂しさに寄り添えなくて、一人ぼっちにしてしまっていた。……自分のことしか考えなくって、とても我儘な娘だったね。


 それでも、いつも、僕のことを守ってくれた……


 そんなことが今日も脳を過る最中、お隣のお部屋から、弾む声が聞こえてきた。かなりだけれどボリュウームアップな音声。喜びの歌を奏でる、歓喜あふれる梨花りかの声。


 それはね、

 朝の食卓までをも連なった。梨花と僕は、このお部屋と同様にお隣同士の椅子。テーブルの向かい側には、パパとお母さんがいる。梨花はお母さんのことを「ママ」と呼ぶ。


 ならば、梨花にはママが……二人いるの。


 もう一人のママは、梨花の育てのママで、美津子みつこママ。僕は……僕も梨花と同じように「ママ」と呼ぶことにした。「お母さん」と「ママ」と使い分けているの。


 そして、お祖母ちゃんがいる。

 僕にも、梨花にも優しいお祖母ちゃんの笑顔も声も弾んでいる。


「良かったね、梨花。それに千佳ちかも」


 と、一緒に喜んでくれる。サンタさんからのXマスプレゼント。……なら、梨花は今もサンタさんを信じているのだろうか? その答えは……パパと僕の目が合った時に、わかったような気がする。その時のパパの表情と……それに多分、僕の表情も合わせて。



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