第二九九回 夕陽に面影残し、今日は違う帰り道?


 ――やはり違う帰り道。歩まず夕陽に向かって走っているの、先生と二人で。



 青春している! まあ、解釈は間違っていないとは思うのだけれど、ちょっと……何か違うと思われる。走るのは車。令子れいこ先生が運転するポルシェだ。


 緑の中を走る、真っ赤なポルシェ……


 そこはカントリーロードより、もっとカントリーロードなの。さらには流れるBGMまでも『カントリーロード』なの。僕が「聴きたい」ってリクエストしたからなの。


 で、見るカントリーロードと、

 聴くカントリーロードのコラボの中で……訊くの、唐突に、


千佳ちかさん、どう決められた?」


 と、令子先生が。僕は思わず「えっ?」と訊き直しを求め、


葉月はづきさんの言ってたこと。カクコンの出展……じゃなくてエントリーだったかな?」


 そして更に、思わずプッと、


「出展て、絵を出展するわけではないですから」


「いいじゃない別に……意味は通じるんだから」


 と、ちょっと拗ねた令子先生が、何か可愛く思えて、とっても安心感があった。


「でも、もう決まってるようね」


「……はい」


 そして真面目な一面も、令子先生は兼ね備えていて、……そう思っている最中で到着した。そこはもう見慣れた景色と、僕のお家の前で……そこには、


「じゃあ千佳さん、また明日ね」


「はい」と、言葉を残して車を降りる。リュックも忘れずに背負って、黄色いリュック。


 そこには、梨花りか可奈かなもいた。……そう、その光景を見たからだ。


「お帰り千佳、あなたも決めたって顔だね」


 と、可奈は言う。……あなたもって、じゃあ梨花も? 心を決めたってことなの?



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