第二九一回 ――午前四時に見たもの。
それは、まだ暗くて……
お部屋も、窓から見える風景も……
でも、強いて言うならクリスタル。キャンドルのように輝くイメージ。霜が降りるほどに冷たいお外に対して、お布団の中は温かいの。……なぜなら、ちょっと恥ずかしいけれど、
僕が身に着けているもの、それは彼シャツ……
太郎君のラージなTシャツ一枚だけで、その下は裸……下着はないの。でも、寒くなくて心地よい温かさなの。それに気持ち良くて安心できるの、太郎君の胸の中で。
このまま、
このまま、ずっと一緒に。今日が休日だったいいのに……とさえ思った。なら『二度寝に限る』そう囁いたの、僕の脳内で。――『一緒に寝坊しちゃえ!』とも囁くの、僕の中のもう一人の僕が。天使と悪魔……いやいや、善と悪が戦いを繰り広げているの。
そして、その最中に、
「
と、パチクリと、太郎君が起きちゃったの。……そう、僕の目の前で。至近距離で。
少し残念とも思えたけれど、そうだね、前に進まなきゃねと、僕は起きる決心を固めたの。……でも、もう少しだけ。そう、もう少しだけ……ぎゅっと。
「おいおい千佳、どうしたんだ?」
「まだ子供だもん、甘えるの止めないもん」
すると、太郎君はヨシヨシと……してくれた。
だから、……そして起きるの、一時間後の午前五時に。お外はまだ……日の出を待たず暗いままだけど、歩くの、お家まで。僕のお家まで。太郎君も一緒、送ってくれたの。
――ただいま。
と、僕のお家。玄関のドアを開けると、梨花が迎えてくれたの。
おかえり、千佳。――と。それは僕が、新たなスタートを切れたという合図なのだ。
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