第二七六回 君の笑顔は僕の笑顔。……そして皆の笑顔。


 ――例えば、あの伝説の大樹の傍で咲き誇る向日葵のように。色は元気な黄色なの。



 僕は押すの。葉月はづきちゃんの乗る車椅子を。ほほ笑みは白い色。


 ……あっ、でも日焼けかな? ほんのりと赤みが……白いハットから覗く、葉月ちゃんの顔。頬っぺたも。ふっくらと、柔らかそうで、


千佳ちか先輩もだよ」と不意に、ニコッと葉月ちゃんは言ったの。


「じゃあ、今日も宜しくね。葉月お嬢様」


「うんうん、宜しい。今日はご機嫌だね、太郎たろうさんといいことあったんだね」


「ちょ、ちょっと」と、ネット上で炎上することはないけれど、お顔は炎上。


「おっ、鋭いね、葉月ちゃん」


 と、太郎君。……あの火曜日以来、僕の傍にいるの。そして、……そして少し距離を置いて、梨花りか可奈かながいる。ここは木漏れ日の中にある中庭。あの伝説の大樹がそびえ立つ場所でもあるの。……伝説、それは学園の七不思議の一つを示す、示している。



「ここで、告白するとね、その二人は永遠に結ばれるんだって。

 ……と、瑞希みずき先生が言ってたの。それでね、あのね……千佳先輩」


 少し俯き加減の上目遣いで、葉月ちゃんが、……ま、まさか……


「太郎さんも一緒にね……」


 ええっ! それは、ちょ、ちょっと、……いくら葉月ちゃんのお願いでも。


「もちろんね、千佳先輩も。僕は告白したいの、皆に。

 そしたら、そしたらね、皆と永遠に結ばれるでしょ。きっと、そうだと思うの」


 と、葉月ちゃんは言うの。乙女チックに。



 ――可愛い!


 その発想はなかった。


 そして、少し瞳を潤ませながらも……照れている様子がまた良い。

 ビックリと驚き。似た表現ものを掛け合わせるように、でも、とっても可愛く思えた。


 可愛く……


 でも、それは、この先にある翳りを……

 薄々ながらも……ううん、打ち消しながらも……知る由もなく。



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