第二七五回 涙の向こうに一番星。淡く澄みゆくお月様。


 ――そうだよ!


 僕なんかよりも、ずっとずっといい子なのに。


 何で?

 何で病気は葉月はづきちゃんを選んだの?



 とっても明るい子なんだよ、とっても心の強い子で頑張り屋さんで……僕なんかよりも辛いのに、もっともっと怖くて泣きたいのに、笑ってるの。満面な笑顔なのいつも。


 学校だってずっと行きたかったのに、大好きでも行けなかったのに……


 やっと行けたと思ったのに……もう行けなくなるかもって……そんなの駄目だよ、会えなくなるなんて、もしも、もしもだよ、死んじゃったら、承知しないんだから……


 ……


 もう、言葉になんないよっ!


 言葉にもならない叫び、心から泣いた。


 涙だって溢れて溢れて……枯れることも、過ぎゆく時間も忘れるように、

 僕は……僕は、小さな子供のように、太郎たろう君にしがみつき、胸の中で大泣きした。


 太郎君は、太郎君はね、


「何でお前は、そうなんだ? こんなになるまで……

 俺がいるじゃないか、俺だけじゃ足りないなら梨花りかお姉だって、可奈かなお姉もな、お前のこと心配してるんだぞ。もっと甘えろよ、もっともっと泣いたっていいんだよ……」


 と、温かくて、


 それでも、しっかりと力強く、受け止めてくれる。


 涙腺も崩壊だけれど、語彙力も崩壊しながらも心で……心だけは、まだ地に足が着いている。ブレないように、崩れないように支えている。


 思い切り泣いてもいい。思い切り悲しんでも……


 でも明日には、笑顔で、みんなで元気に、葉月ちゃんを迎えに行こうと約束したから。



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