第二三一回 お話は、まだ終わってないんだよ。


 ――それが証拠に、六畳の一人きりのお部屋。煌めくお昼間近な日差し。



 膝を抱えて隅っこで、まだ涙が止まらすに……

 それどころか声も出ちゃって、泣き声も止まらず……


 PCは無事に動くようになり、起動したままで、でも何もできず、僕は泣いたままで。


 お母さんに怒られたの。……ティムパパが。「あなたがついてながら」って。それでもパパは言うの。言ってくれたの、「千佳ちかは悪くないんだよ」って。「だから、もう泣かないで」とも……だから、泣いちゃうの。余計に泣けてきちゃうの。



「あらあら、どうしたの? そんなに泣いちゃって……」


 と、声が聞こえる。……聞こえた。確かに。


 えっ? どこから? 初めて聞く声で、年配の女の人。キョロキョロと探る、涙もビックリしたおかげで止まっちゃったの。でも何処? 何処から? するとね、……変わっていたの、いつの間にか、PCの画面。その大きな画面に女の人……年配の女の人。


千尋ちひろは、いるかな?」と笑顔で、優しい笑顔で言うの。白髪の、おばあちゃん。でも綺麗な人なの。……言われてみると、お母さんに似ている。


 まさか、まさか……


「お祖母ちゃん?」


「じゃあ、あなたが千尋の……」



「娘の千佳だよ、お祖母ちゃん」


 笑顔、咲き誇るよ。涙はね、完全に止まっちゃったの。そのあとには虹がかかる。


 流れる午後の風は、流れる午後の風はね……

 きっと素敵な、時間を運ぶよ。同じく流れるものだからね。


「お母さん、呼んでくるね」と、僕は駆けだす、狭きお家の中だけれども。



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