第二二一回 始動! 芸術部。


 新型ウイルスの影響により、三月三日から五月三十一日までの間、学園は休校。


 その間は、もちろん部活動も休み。


 しかしながら、少しずつ落ち着きを取り戻し、通常の授業にまで回復しており、それと比例して部活動も再開を見せていた。体育系も文科系も、隔たりなく足並み揃え……


 和気藹々と。


 そうであるなら、僕ら演劇部と令子れいこ先生の美術部が手を取り合って、期間限定だけれども新たなメンバーを迎えてあげたい。おもてなしの心を今この時に集結するのだ。



『芸術棟は、

 芸術部と新たに看板を掲げる集いの場』


 高らかに雄叫びを。狼煙も上げるのだ。


 令子先生との約束通りならば、明日……新たなメンバーを迎える。葉月はづき六日目で、葉月の訪問者で、その名も葉月ちゃんだ。……顧問は令子先生となって正式に。僕ら……僕と梨花りか可奈かなも、葉月ちゃんの先輩となる。それもまた正式に。気を引き締めねば。



 ――以上の理由から、本日は大忙し。


 とはいっても、この場に集う皆は……楽しんでいる。芸術棟のレイアウト変更……というよりも所謂模様替えだ。目的は二階のベランダのアトリエを、完全なまでに一階に移動すること。それはそれは令子先生の発案だ。目的の奥の目的は、僕らにもわかる。


 すべては、


 ……そう。すべては車椅子の葉月ちゃんのためだ。


 葉月ちゃんはここで、これから僕らと一緒に活動する。葉月ちゃんは令子先生と一緒に百号のキャンバスに描かれる『天使のうたたね』を完成させたいと言っていたの。


 なら……主に着色だね。色重ねの、深みのある色。


 なら、僕らみんなで和気藹々と仕上げたいね。その一つの作品を。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る