第百九十六回 ……風、流れる。
――窓は、開いていた。それに、ドア……スライド・ドアも。
アイボリー色の四角い窓ガラス付きの……スライド・ドアは、学校では定番のアイテムだ……って、いう説明ではなくて、その……僕たちの状況はね、本当に開放的で……
「
「謝らないで……
本当に嬉しかったの。
流れる風は、僕の……
僕らの火照った体を、僅かながらでも冷ましてくれるのだけれど、
「もう、元には戻れないね、僕たち……」
「って、後悔してるのか?」
「ううん、そんなはずない。
太郎君のこと、もっと大好きになった」
――ギュッと身を寄せられる。
それはね、太郎君の引力なの。僕とは違う太郎君の体温。……以前には考えられなかった、独りぼっちではないという確かなもの。僕は今、確かに……肌で感じている。
「……ねえ、僕、汗臭くなかった?」
と、急に気になったの。それって、とっても恥ずかしくて……
「むしろ大歓迎! 可愛い千佳の匂いだから」
と、太郎君は笑いながら言うの。……僕たちのしたことは、あの雨の日とは全く異なるもの。恥ずかしいけれど優しいの。……それに、とても温かくて愛されているの。
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