第百七十四回 たくさんの愛を奏でる、その中で。


 ――ポップスのリズムに合わせて奏でるラブソング。それこそが原動力。



 恋愛、友愛、親子愛、家族愛……まだまだジャンルをも超え、どのジャンルにも当てはまるよう思考が為されているラブソングが、この会場に高らかと奏でられている。


 まるでテーマソング。


 この『ウメチカ戦』のテーマソング……



 だから崩せなかった。新一しんいちパパのアバターは音楽……音楽を原動力にして動いている。


 それはいつの日か……梨花りかが口遊んでいたシンガーソング。


 酷似……ううん、そのものだった。


 今この会場に響く音楽に載せて、歌っているのは梨花。実は……声も、僕と梨花は似ている。でも上手い。一緒に行ったカラオケとは比べ物にならないくらい上手いの。


 それどころか……


 この『ウメチカ戦』のヒロインに値する。



 そんな梨花が教えてくれた。


 ラスボスの、真の攻略とは……親子愛。――パパの胸に、しっかりと飛び込んでいきなさい! と。それこそが攻略……策や法ではなく、まっすぐな健気なる心。


 僕は太郎たろう君を見る。ソーシャルディスタンスを越える心の距離。


 太郎君、いい?


 ああ、千佳ちかに任せる。――その言葉たちが宙を交わる。同時に結ばれ

る、包み隠さずの裸で結ばれる僕らのイメージ。美しいハーモニーを奏でる。そしてできた僕らの『高速回転キック』は貫く。リスクの多い技だけれど、新一パパのアバターが可変する瞬間を捕らえた。それは胸部と背面の部位。可変ギミックのためか、一番に込み入っている箇所。


 飛行形態から人型形態に可変する途上で二つに割れて、爆発を巻き起こした。



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