第百六十七回 四連休も後半戦……今日もまた。


 ――私の鉄道沿線をまっしぐら!



 朝の日差しの中を、臙脂色の電車は駆け抜ける。……いざや前進! 終点まで。


 終点こそが我らの、大戦場とともに大舞台。



 先日の僕と美千留みちるが巻き起こしたドラマが、または之迄の生き様が、それを因とした果となることが……赤裸々に描かれる試合。それは試合の数だけの主人公や中心者が登場して、桜梅桃李な試合の中、様々なるドラマが展開されている。……されど、あくまで試合なのだから、敗者もいれば勝利者も存在する。


 初日は十四あったチームが、二日目には七チーム。三日目の本日は……四チームが激突する。僕らのチームからは太郎たろう君が出陣する。


 昨日は僕が……美千留と大激戦をしたから、今日は太郎君が「俺がやる!」と、その一言のみを残し、会場の中心に身を投じて大画面に映し出される。もちろんアバターが。


 太郎君のアバターは、


 自らを『ウルトラ・タロ』と名乗るだけあって、やはりウルトラマンの趣。


 地球上だとエネルギーの消耗が激しく、凡そ二分五十秒というタイムリミットが存在する。それこそが彼の弱点で……胸のカプセルは、まるで歩行者用の信号機みたいに、青から赤の点滅が始まって、ギリギリ三本勝負とも……ということは、そのうちの一本は負けたということ。昨日の僕と同じようにKOされたのだ。複数コンボによって……


 でも、勝つ。


 それでも最後は勝つ。三本目には勝負を決める。僕がそうであったように、太郎君もそうしたのだ。……諦めなかった。勝負は最後まで、そう。勝つ一念の強い者、諦めなかった者に輝く。『スクールカースト』という言葉は、太郎君と再会してからだ。僕のエッセイで、その禁句にしていた言葉を載せ始めたのは……それまでの僕は、その言葉からも逃げていた。ここでお浚いということで、太郎君は僕に本当の強さを教えてくれた。



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