第百二十八回 二十四日。それぞれの想いを語るがたる。


 ――今が令和二年なら、その五年前の二〇一五年。



 この星の裏側の地から、

 遥かなる海を渡り巡って……一人の先生。そして二人の転校生が訪れた。


 二人の転校生は双子で……僕と梨花りかとは、真逆と言ってもいいほど……少しは似ていたそうだけれど、それ以前に性別が異なっている。姉と弟の組み合わせ……二卵性双生児だそうだ。実はいうと、その姉がマリさんで、弟が海斗かいと部長だったのだ。


 マリさんの本名は、早坂はやさか海里かいり……


 マリ……

 マリン。そうなの。


 今はなき喫茶店の『海里マリン』も、察しの通り、この人の名から取った。



 ――マリさんについては、

 僕自身は、それ以上は詳しくない。


 右の条々、或いは上記については、梨花の方が詳しい。……断然そうなのだ。マリさんのことを詳しく知っている瑞希みずき先生と、僕よりも梨花の方が付き合い長いから。


 それに、りかのじかん。にだって、


 演劇部の練習の模様にも綴られているように、梨花にとってマリさんは大先輩であると同時に『お姉様』と、呼べるくらいの存在。……気品も高く優雅なお人なのだ。


 例えるなら『プリンセス』

 プリンセス、プリンセス……と連呼しながら、自然と芸術棟に足が向いていた。


 それどころか今は、もう室内。しかも二階。


 さらに言うなら、この間の、開かずのドアの前……とはいっても、もう開かずのドアではなくなっている。そこはアトリエ……アトリエなのだ。そしてそれは、


 この間の「君を描きたいの」――という令子れいこ先生のお言葉が気になったからだ。



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