第二十四章 ……そして、六月二十日の向こうには。

第百二十五回 まずは、その日を迎えるところから。


 それは、思いのほか静かだった。


 静かに、ひっそりと……その幕を閉じたのだ。



 二〇一三年二月の設立から七年もの間、ここを訪れる学生さんたちを見守り続けて、語り継がれてゆく思い出をも、そっと心の片隅に残すようにと……令和二年六月二十日の今日をもって、喫茶店『海里マリン』は閉店する。


 昨日十九日は、本年の三月三日までアルバイトとして勤めてきた川合かわい未来みらいさんのお誕生日。何と二十歳を迎えたそうで、ここで酒を酌み交わしたそうだ。御父様と……


 その次の日だからこそ、僕は、僕らは、


 現場には出向かわずに、ここにステイ……各々の自宅待機となり、時が過ぎるのを感じながら、そっと心の中で「ありがとう」と感謝の思いと――



「お休みなさい」……と安らぎの言葉を、その様を見ずとも風に載せて贈ってあげた。


 そんな思いたちを、

 そんな僕らの思いたちを、一身で引き受けるパパティムさん。――もうお客さんが訪れることのない喫茶・海里と最後の一日を共にする。夕方の六時に戸締りをしたなら、そこで終了。


 ……でも、


「さようなら」は言わない。その魂は永遠だから……


 やがて君は姿を変え、その役割をも『新章たる』には相応しくて、君は、僕たちとともに新たな出発を迎える。ビフォーとアフターをも喜々とし、その行く末を画面いっぱいにと全国ネットで描かれてゆく。――つまり喫茶・海里は生まれ変わる。


 二人のパパティムさんと新一さんが初の共同作業。


 僕と梨花りか、この双子を中心とした大家族のお家として生まれ変わる。ビフォーとアフターを兼ねるリフォームは半年かけて行われる。この年のXマス……


パパティムさんとお母さんの結婚一周年のアニバーサリー。そして、僕が『梅田うめだ千佳ちか』となった一周年の記念に。


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