第九十六回 古時計……語る刻。


 ――大きいけれど、ノッポではなくて、


 僕の身長は、もう何年前かな? その古時計よりも高くなっていた。



 年齢は、僕よりもずっと年上で、幾つなのかは……


 新しいパパができる前から、此処に引っ越してくる前から……ううん、それよりももっと昔。僕が生まれるもっと前、お母さんの幼少期まで遡る出来事……


 例えば今日、今日も……

 まずは三人ここに集った。……プラネタリウムから帰ってきても、お喋り弾む。


 その中心、話題の提供者はいつも可奈かなだけど……今日も同様、同じ。


「それにしても梨花りか、どうして髪切ったの?」


 と突然、可奈は訊く梨花に。……意識はしないが、イメージ膨らむ僕の脳内。女の子が髪を切る理由とは、まさかとは思うけど、……でも、可能性はある。僕と梨花は双子。同じ人を好きになるのは……多大? 梨花が好きなのは女性、または女の子。それも初恋していたのが瑞希みずき先生で、それを経てから、いつも身近な存在の可奈。本当に恋は盲目。お友達以上に、大好きという想い。……と、いう具合に、百合と思っていたのだけれど、


 もしかしたら、百合から、百合ではなく異性との恋に目覚めて、


 その対象がね、……思いたくないけど、思ってしまって、知りたくないけど、その理由を。知りたくて、ウ~ッと、可奈の次の言葉を催促するようにね、視線を送る。


「どうしたの、千佳ちか。そんなに顔を赤くして?」


「へ? ……ううん、な、何でもない」


 ドキッというより、何故かギクッとした。何かイケナイことをしているような、そんな思いだ。「変な子ね」と、可奈は言うけど、思春期の女の子らしいと僕は思う。



 きっとこのお部屋……リビングならぬ、お家の中心に位置する古時計さん・・・・・も、

 僕と一緒で、次なる梨花の言葉を待っていることだろう。



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