第七十九回 お話は続くけれど、沈黙は続かないから。


 ――だから、℮スポーツを始めよう。



 そこには、もう沈黙はない。


 太郎たろう君は、もう僕に沈黙を与えない。すぐさまPS4・5を起動、慣れた手つきで太郎君が。作業用のBGM、バーチャル&リアルをも兼ね備えた効果音……その数々。


 ハートフルなイメージとは異なるが、

 マーチングなイメージ……それなの。



 そして太郎君は、


「もう怖がることなんてないんだ、千佳ちか

 お前が背負ってるそんなややこしいもの、俺がまとめて面倒見てやるからな」


 ……と、言ってくれた。この小さな胸のその奥で、キュンとなる瞬間! もしこのお話がラブコメというジャンルなら、女の子としては言われてみたい名言だ。


「嘘でも、嬉しい……」

 それは、涙が溢れるほどに……髪から覆うバスタオルが、その涙を隠してくれる。


 クシャ!

 という効果音は出ないが、バスタオルごと、太郎君は僕の髪を『クシャ』とした。


「嘘なのか? 見ろ、俺の目を。

 ……俺は、お前をこれ以上泣かせないと決心したんだ。お前が笑えない明日なんて絶対に作らない。お前と一緒に℮スポーツ大会、笑いながら優勝してやるんだからな」


 太郎君は、僕の顔を覗き込む。

 その傍らでは、可奈かなが見ていることも忘れて……


「……それ反則だよ、

 太郎君がカッコよすぎて、笑ってられなくなるじゃない」――その言葉の頃には、もう涙が零れるのを感じていた。でも……でもね、それ以上に、嬉しかった。



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